「ウマチー」という言葉をご存知でしょうか?ウマチーは沖縄の御願行事であり、稲麦粟の豊穣祈願祭として古来から行われてきました。
このウマチー、今では糸満市などの南部地域にはしばしば見られますが、那覇市などの都心部ではあまり見かけなくなりました。
しかし現代では意味合いが少し変わって、家単位で商売繁盛や家の繁栄祈願として注目され始めてきました。
そこで今回はこのウマチーについて知っておきたい基礎知識をお伝えしていきます。
まず、ウチマーとは琉球王朝時代に盛んだった御願です。
琉球王朝に使える女性の神職「ノロ」や役人がそれぞれの集落で儀式を行いました。
女性の神職であるノロを先頭に、役人たちが集落などを馬で練り歩き、集落内の拝所(御嶽など)を巡っていました。
そもそもウチマーとは?
前述したようにウチマーはもともと琉球王朝時代にとても盛んに行っていた稲麦(八重瀬諸島では粟)の豊穣祈願、収穫祭です。
時期でいうと、旧暦2月から6月にかけて、麦2回・稲2回の計4回行われます。わかりやすく下にまとめると、
①麦の豊穣祈願・収穫祭
・旧暦2月のニングァッチウマチー(2月)は麦の穂祭(豊穣祈願)
・旧暦3月のサングァッチウマチー(3月)は麦の大祭(収穫祭)
②稲の豊穣祈願・収穫祭
・旧暦5月のグングァッチウマチー(5月)は稲の穂祭(豊穣祈願)
・旧暦6月のルクグァッチウマチー(6月)は稲の大祭(収穫祭)
となります。
しかし、現代では稲や麦が衰退していっていて、ウマチーの風習が残っている南部などの一部の地域では、あまり細かな違いを意識していないことが多いです。
また、八重瀬諸島では稲麦よりも粟栽培の方が盛んだったため、呼び名も地域ごとに分かれています。
①八重瀬諸島
・旧暦5月の稲の収穫祭は「アイスクマ」
・旧暦6月の稲や粟の収穫祭は「プーリィ」
②宮古地方
・旧暦2月の麦の収穫祭は「麦プーリィ」
・旧暦5月の収穫祭は「シツ祭り」
・旧暦6月の粟の収穫祭は「粟ブース」
ウマチーに必須のお供え物「デンス」
ウマチーに欠かせないお供え物が神酒です。この神酒ですが、「ミキ」「デンス」などと呼ばれています。
かつては米やサツマイモなどを発酵させてお酒にしていましたが、現在ではほとんどが醸して作るアルコール成分のない、甘い飲み物がほとんどです。
今となっては色々な作り方がありますが、その作り方のうちの1つを紹介します。
①新米のおかゆを作る
②あく抜きしたサツマイモを入れてミキサーにかける
③一晩寝かせる
④砂糖や黒糖などを入れて混ぜ合わせる
⑤ポリバケツに入れ、葉っぱで蓋をして宗家へ移動させる
このデンスは集落の人々に振る舞われます。
しかし神酒の作り方は地域や家によって様々ですので、麦で作ったり、サツマイモを入れなかったりと色々存在しています。
また、現代では神酒の代わりにヤクルトやヨーグルトをお供えしている地域もあります。
ウマチーはどのように行われる?
現代ではウマチーはまだ南部地方などで行われている地域もあるとお伝えしましたが、どのようにして行われているのでしょうか?その一例を紹介します。
・旧暦6月のウマチーでは朝から公民館に人々が集まって御願を行う。
・集落内の門中の代表が公民館などに集まって、皆で御嶽などの拝所を訪問し、拝みを捧げる。
このように地域によって違う風習の場合もあり、中には拝所を訪れた後には綱引き行事がある地域もあります。その後相撲大会を行う地域もあるそうです。
宗家で行う子孫繁栄祈願
ウマチーは基本的に集落単位で行われますが、門中単位でおこなうものもあります。
この場合には、宗家(ムートゥーヤー)の神棚にお供え物をして拝みます。
このお供え物として一般的になものは、お菓子や果物の盛り合わせと、神酒「デンス」です。
お膳にお菓子・果物の盛り合わせ、神酒をお供えし、ヒラウコー(沖縄の平らな線香)をタヒラの12本を香炉に拝して、収穫に感謝します。
この門中単位でおこなうウマチーは子孫繁栄を願って手を合わせます。
まとめ
今回は沖縄の豊穣祈願、収穫祭であるウマチーについてお伝えしました。
琉球王朝時代から行われているウマチーは地域によって呼び名が違ったり、現代では子孫繁栄のために行われるほうが多くなっています。
昔の神酒は口噛み酒だったため、衛生的に現代には根付かず、それぞれの地域で様々な作り方に変化しました。近年では子孫繁栄のために家でも行えるウマチー。
ITの発達して現代・沖縄の風習・文化を考える時間も時には必要かもしれません。