以前、このコラムでネット墓というものを取り上げました。ネット上にお墓を造って、オンラインでお墓参りができるというものです。
コロナ禍もあり、ネット環境があればお墓参りができるということで、世界的に広がりを見せています。
さらにここへきて、一歩進んだサービスが話題になっています。それがお墓QRコードというもの。どんなサービスなのか。今回はお墓QRコードについて調べてみました。
ネット墓はネット上に建立するお墓
ネット墓は、ネット上に建立し、故人の名前や戒名、遺影、さらに動画なども載せることができるというものです。
墓地不足や無縁墓化、さらに承継者不足など現代のお墓問題の改善に役立つと思われる一方、伝統的な宗教と相容れない、サイトが消滅する可能性があるなど、デメリットも指摘されています。
そこで、普通のお墓、いわゆるリアル墓とネット墓の両方を造れば、リアル墓にお参りに行けないときはネット墓に手を合わせることができます。
昔あった両墓制を現代に適用する考え方として、おすすめできると紹介しました。
お墓に印刷するQRコード
お墓QRコードとは、墓石にQRコードを印刷するものです。お墓を訪れた人がそれにスマホなどをかざしてスキャンすると、故人のデータなどを載せたサイトにアクセスできるというものです。
アメリカやイギリス、オーストラリアでは普及が進み、すでにお墓の2~3%にQRコードが付いているという話もあります。
日本でも販売が始まっています。実際にスキャンするとサイトにアクセスできて、故人の名前、写真、場合によっては自分史や動画、メッセージ、さらには家系図なども見ることができるといいます。
墓誌の代わりにもできる
ところで、墓誌を備えたお墓を見ることがあります。墓石とは別に小さな石碑を建て、それに故人の名前や戒名、亡くなった年月日、享年などが記されているものです。
簡単にいえば、そのお墓に誰が葬られているのかを示すのが墓誌です。一代限りのお墓なら小さな墓誌で済むかもしれませんが、代々の家族や複数の人が葬られている場合は大きくなる場合もあり、スペースや費用の問題なども出てきます。高級な石だと10万円以上する場合もあります。
そこで墓石にQRコードを彫り込んだり、セラミックに印刷したものを墓石に取り付けたりすれば、墓誌代わりにすることもできます。
しかも、サイトならば前述のようにテキストや写真、動画なども表示することができるので、通常の墓誌とは比べものにならないほどの情報を提供することができます。
さらに、 QRコード作成費用もセラミックなら1万円程度からとなっているようです。
また、QRコードをスキャンすると、その履歴が残るようなサービスもあります。そのため、いつだれがお墓参りをしたのかが一目瞭然で、大変便利に使えます。
セキュリティには気をつける必要がある
ただ、 お墓QRコードは、セキュリティの問題を抱えます。故人と何の関係もない人がお墓を訪れ、スマホで QRコードをスキャンすれば、故人の情報を見ることができます。名前や享年などはもちろん、場合によっては亡くなった原因や家族に関することなど、きわめて個人的な情報が漏れたり、それを悪用されたりする可能性すらあります。
そんなことを防ぐため、ある業者は墓石の扉に鍵を取り付け、開錠して扉を開けたところにQRコードを設置したりしているそうです。鍵がなければ故人のサイトにアクセスできないので、個人情報の漏洩や拡散を防止できるというわけです。
また、招待者に承認された人のみがサイトにアクセスできるようにしているサービスもあります。墓石の鍵が物理的なセキュリティだとすれば、こちらはデジタルなセキュリティということができます。いずれにしても、だれでも簡単にアクセスできるというわけではありません。
セットで販売すれば売れるかも
もし、こうしたサービスをお墓業者が取り入れたら、日本でも需要が多くなるかもしれません。というのも、たとえばリアル墓とネット墓、さらにそれをつなぐQRコードの作製までお墓業者が一手に行えれば、トータルのコストが下がり、購入しやすくなると考えられるからです。
そしてリアル墓、ネット墓、QRコードがセットになって普及すれば、お墓参りのスタイルがかなり変化するでしょう。
その意味では、今後注目されるサービスといえます。
まとめ
お墓にQRコードをつけ、それをスマホなどでスキャンすることでネット墓のサイトにアクセスできるサービスが注目されています。
単にお墓で手を合わせるだけでなく、サイトに掲載されたさまざまな情報を見て、故人をしのぶことができます。
また、従来あった墓誌の代わりとすることもでき、スペース的にもコスト的にも導入しやすくなるでしょう。
セキュリティの問題も解決策が整備されつつあり、今後お墓参りのスタイルを変えることも予想されます。