「ライフエンディングサービスって、なに?」~終活を業者が支援する話~

このコラムでは、終活について何度も取り上げてきました。自分の死やその後を見据えてさまざまな準備をし、安心することで、残りの人生を心豊かに過ごそうというのが終活の目的です。

終活は、もちろん自分で行うものですが、実は近年それを支援するサービスが登場しています。それがライフエンディングサービスというものです。

耳にしたことがない人や、聞いたことがあってもその内容がよくわからないという人もいるはずなので、今回はライフエンディングサービスについて少しくわしく見てみます。

死んだ後の課題解決を支援

ライフエンディングサービスの一般的な定義としては、自分が死んだ後に残ると考えられるさまざまな問題解決の取り組みをサポートするもの、ということになっているようです。

つまり、生前整理やエンディングノート作成などの生前に行うことよりも、死後の課題解決を支援するのがライフエンディングサービスということになるでしょう。

葬儀・相続からSNSまで

では、具体的に対象になるのはどんなことでしょうか。

まずは、葬儀です。特に急逝だった場合には、遺族はかなり混乱したりしますので、それを避けるための準備をサポートするというわけです。

相続関係も大変です。きちんと準備しておかないと、遺産をめぐって遺族が血肉の争いを展開することになりかねません。しかし、素人では難しい面もあるので、助けてもらえるというわけです。

さらに、現代的な問題もあります。たとえば、パソコンやクラウドに保存されているデータをどう処理するか、SNSのアカウントはどうするのか、ブログは?など、デジタル時代ならではの課題処理も支援してくれます。

主に葬儀社が提供する

ライフエンディングサービスを提供するのは、主に葬儀社です。お葬式という人生最後のイベントをプロデュースするのが葬儀社の使命であるとすれば、その業務内容を広げて終活支援に乗り出したのはある意味当然といえます。

また、葬儀社の多くは以前から、会員を募り、入会金を払って会員になった人には通常より安い費用で葬儀サービスを提供するというビジネスモデルを展開してきました。

これに組み込む形で、会 員にはさまざまな情報を満載した会報誌が定期的に届くとか、葬儀・遺言・相続についてのセミナーや専門家を講師とする講演会お墓の視察会遺影の事前撮影会などに無料または格安で参加できるといった、かなりおいしい特典を用意している葬儀社もあるそうです。

こうした会員向けサービスも、ライフエンディングサービスの一形態といっていいでしょう。

家族に代わって行うという面も

ライフエンディングサービスが台頭し始めた背景には、今の日本が抱える社会的問題があります。そのひとつが少子高齢化

そもそも、葬儀や相続といった死後の課題は、子どもなど遺族が主に対応するべきとも考えられます。しかし、子どもがいない、もしくは少ないなどの事情から死後の対応が難しいと思われるケースでは、自身が生前に解決しておかなくてはなりません。

それが終活の動機にもなるのですが、さらに一歩進めて業者がサポートするものともいえます。こうした流れを考えると、ライフエンディングサービスは、家族に代わって業者が行うものということもできます。

葬儀規模縮小の影響も

一方、葬儀業界自体の構造的な問題も影響しているようです。というのも、1990年代初めのバブル崩壊以降、葬儀の規模は縮小の一途をたどってきました。葬儀業界にとっては受注件数の減少金額の低下に加え、家族葬が一般的になってきたことから、かつてほど儲からなくなっています。

加えて昨今のコロナ禍です。通夜も告別式も省き、近親者数名が付き添って火葬のみを行う直葬も増えてきました。葬儀社の売り上げがさらに落ちているのは想像に難くありません。

そこで、本来死後に行うべき葬儀の契約を生前に行い、利益を確保しておこうという動機もライフエンディングサービスの裏にはあるようです。

人生の総決算をプロデュースする

こうした社会的および葬儀業界的な要求から、ライフエンディングサービスが普及しつつあります。

しかし、単に終活の支援をするだけでは、なかなかお客の支持を得られないと思われます。規模や形態は多少変わっても、葬儀は文化であり、それを中心としたライフエンディングは当人にとっては人生の総決算として大切なのもです。

したがって、ライフエンディングをトータルにプロデュースし、死を迎える人にも遺族にも心から満足してもらうという姿勢が必要でしょう。

まとめ

主に葬儀や相続などの課題を生前に解決しておくことを目的に、葬儀社などが提供する終活支援がライフエンディングサービスです。

背景には少子高齢化や葬儀の規模縮小などがあります。

しかし、単なる終活サポートではなく、本人も遺族も満足するライフエンディングをプロデュースできるかが、このサービスのキモといえます。

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