終活がブームといってもいい様相を呈していますが、終活の中でもお墓をどうするかは、最大といってもいいほどの問題になります。
自分が死んだあとは、先祖代々のお墓があってそこに入る、門中墓に入る、もう建ててあるなど、すでに解決済みの場合はいいのですが、そうでない場合は悩みの種になったりするのです。
悩みの中でも宗教がらみの場合はさらに大変です。仏教や無宗教の場合はいいとしても、キリスト教徒の場合はいろいろ難しい面もあります。
そこで今回は、キリスト教徒のお墓をどうするのかについて、考えてみたいと思います。
読谷村・高志保の丘にある教会の共同墓。屋根にそびえる十字架でキリスト教のお墓であることが一目でわかります。
キリスト教では個人墓が基本
このコーナーでは何度も紹介していますが、キリスト教では本来、遺体を土葬します。したがって、先祖代々のお墓とか、門中墓、さらに家族墓のような形態はもともと存在しません。ひとつのお墓に何体もの遺体を埋葬できないのも理由のひとつでしょう。
そこで個人墓が基本となります。
また、お墓そのもののスタイルも仏教とは異なります。キリスト教徒のお墓にも石が立てられますが、日本のものよりシンプルです。さらに大きさに至っては、沖縄の巨大な墓とはまったく逆の小さな碑となっています。
墓石が小さくてシンプルなのは、個人墓であるためだけではなく、死生観の違いも影響しています。
日本におけるお墓は、肉体を司る魂が眠る場所だったり、死後の家だったりします。しかし、キリスト教では、人の死は新しい生の始まりだったり、魂は神の元に召されたりします。
お墓に魂が眠ったり、死後の家だったりはしないので、墓石は記念碑的な意味合いしか持たないのです。そのため、やたらと大きくする必要もありません。
キリスト教ではシンプルな個人墓が本来のスタイルです。
墓業者はキリスト教式のお墓も造る
とはいっても、日本におけるキリスト教徒のお墓は、欧米諸国に見られるようなシンプルなものはあまり見られません。墓地に遺骨を埋めて、その上に墓石を立てればいいというものではないのです。
つまり、日本ではキリスト教徒もそれなりのお墓を持つというのが一般的になっています。
そこで、墓業者はキリスト教式のお墓も造ります。沖縄においては、霊園や墓地の中に通常のお墓に混じって、キリスト教徒のお墓も見られます。
そのスタイルも、普通のお墓とまったく違うものではなさそうです。素材が特別な石というわけでもないし、他のお墓との明確な違いといえば、十字架が刻まれていることくらいでしょう。
キリスト教だからといって墓石の素材にこだわったり、凝ったデザインにしたりすれば、費用もどんどん上がっていくでしょうが、そうでなければ普通のお墓とあまり変わらない金額で造ることができそうです。
教会が共同墓を持つケースも
また、キリスト教徒用に共同墓が建てられるケースが増えているようです。典型的なのは教会が所属する信者用に建立するものでしょう。
個人墓が基本のキリスト教で共同墓というのは、矛盾するような気もしますが、これも時代に合わせた変化といっていいでしょう。
土地手当ての難しさや衛生上の問題から、キリスト教においても火葬が容認されるようになりました。それによって複数の遺骨をひとつのお墓に納めることができるようになったのです。
納骨堂形式になっているところも多い
教会の共同墓は、納骨堂の形態を取っているものも多いようです。納骨堂は、教会の敷地内に建てられている場合もあれば、それ以外の墓地に建立されたものもあります。
また、建前として、死者の復活の日まで遺骨を保管するとしているケースもあれば、別のお墓に納めるまでの一時預かりとしているところもあります。
外見的には、余計な装飾は排してシンプルなデザインとしているのが特徴的です。もちろん多くの信者の遺骨を納めることを想定しているので、個人墓よりは大きめ。さらに内部は一階部分と地下部分の二階構造となっているケースもあるようです。
今帰仁村にある教会の共同墓で、建物には「納骨堂」と明記されています。
教会の納骨堂に入るという選択肢がある
このように、教会によっては所属する信者のために納骨堂を用意しているところがあります。キリスト教徒で自分の入るお墓が用意できていない場合は、こうした納骨堂に入ることもひとつの選択肢となり得るでしょう。
もうひとつの問題は費用ですが、これは地価なども関係してくるので、ピンキリです。一括で払う場合が多いようですが、分割が可能かどうかなどは、教会側と相談する必要がありそうです。
まとめ
墓業者に頼めば、普通のお墓のようにキリスト教式のお墓も造ってもらえます。
個人墓を造る以外に、教会が建てた納骨堂を利用する方法もあります。ただ、だれでもOKというわけではなく、原則としてその教会に所属する信者であることが条件です。