「墓活って、なに?」~キーワードになるかもしれない新語の本の話~

就活、婚活、妊活、離活・・・と近年は○活という用語が世の中にあふれています。このコラムでも終活という言葉を何度も取り上げ、ひとつのキーワードとしています。

ここへ来て、墓活という言葉を耳にしました。文字通りお墓にまつわる活動のようですが、さまざまな意味でお墓にまつわる事象がクローズアップされている昨今、新たなキーワードになる可能性もあると考えます。

そこで今回は、墓活という言葉にスポットを当てて、登場した背景や意味などを見てみたいと思います。

2010年ごろに登場

墓活という言葉が初登場したのは、2010年ごろに赤瀬川原平さんが雑誌に発表したエッセイだったようです。思ったほどは新しくないですね。

赤瀬川さんは芥川賞も受賞した作家および画家で、「老人力」というベストセラー本でも知られており、2012年には『「墓活」論』という本も上梓しています。この本の冒頭で彼は「墓活という言葉は自分が考えて初めて口に出した」と書いています。

赤瀬川さんによると、墓地や墓石選びからお墓参りまで、お墓を巡るすべての事柄が墓活という概念に含まれるそうです。したがって、一族郎党がお墓の前に集まって宴会をするシーミーも墓活のひとつということになります。

墓活は終活の中のひとつの概念

また、自分のお墓をどうしようかと考え始める年代を「墓活適齢期」といい、そこに達すると人はにわかに墓活に精を出し始めるそうで、その意味で墓活は就活という大きな概念のなかのひとつということもできるでしょう。

『「墓活」論』で論じられるのは、自分のお墓にとどまりません。ペットの弔いやお墓に関することも墓活の範疇に入るとしています。ペットも家族の一員なのですから、当然といえば当然ですね。

さらに、お墓の引っ越し、つまり墓じまいについても墓活の一環として触れています。墓活適齢期になると体もしんどくなるので、遠距離墓参りは大変だから、代々のお墓を近くに移そうかという話も書かれています。

ネアンデルタール人もピラミッドも墓活

そのように、さまざまな視点から墓活について考えていくと、その概念が大きく広がっていくことがわかります。たとえば、約40万年前に出現し、約3万年前に絶滅したといわれるネアンデルタール人のお墓にお花が供えられていたことがわかっています。

私たちホモ・サピエンスよりも古い人類であるネアンデルタール人のころに、すでに墓活が行われていたことになります。もうちょっと近くなると、エジプトのピラミッド建設も墓活の一種といえるわけです。

こうした時空を越えて墓活論を展開する、赤瀬川原平著『「墓活」論』は、現在もamazonなどで購入することができます。

コミックも出た墓活の本

2019年には、マンガ家の井上ミノルさんの著書「まんが 墓活 それでどうする、うちの墓?」も刊行されました。

これは、お墓の問題をコミックでわかりやすく解説したもので、「田舎にお墓がある」「子どもは海外に住んでいる」など、お墓の継承問題はなかなか大変で、元気なうちに兄弟姉妹で考えておこうよとオススメしています。

また、この本でも墓じまいについて触れているほか、ふつうの墓地から寺院墓地、最新の納骨堂や散骨の話も突撃取材を元に書いていて、墓活初心者にはかなり参考になりそうです。

女性が考える墓活であることもポイント

この本のひとつのポイントは、著者が女性であること。さらに、著者は女きょうだいだけで男兄弟がいません。しかも、子どもも女の子だけ。長男がお墓を継ぐという、古いけれどある意味簡単な方法で自身のお墓問題を解決することができません。そのあたりも同様な境遇にある人にとっては参考になることでしょう。

もっといえば、沖縄でも他家に嫁いだ後、離婚して戻ってきた女性は門中墓に入れないとか、女はトートーメーを継げないし、したがって財産も相続できないなどといった、いわば墓活のジェンダー問題がありますので、その意味でも示唆に富んでいます。

また、この本に出てくるある住職さんが「お墓は、人が集まって気軽にご先祖様に会いに来ることができる場所でありたい」とコメントしており、沖縄のシーミー習慣に通じる部分も感じられます。

ちなみに、この本も本屋さんやamazon等のネット書店で買うことができます。

まとめ

10年ほど前に赤瀬川原平さんが著書の中で使ってから、墓活という言葉が世の中に登場しました。その範囲はお墓づくりだけでなく、お葬式やお参り、さらにペットの弔いなど多岐に渡っており、終活の一部ですが、実際には限りなく終活に近いものとなっています。

つい2年ほど前には井上ミノルさんというマンガ家が「まんが 墓活 それでどうする、うちの墓?」というコミックエッセイも上梓しました。女性ならではの視点から墓活のあれこれをユニークに描いています。

今後、お墓問題がクローズアップされればされるほど、墓活という言葉はひとつのキーワードとして定着する可能性があります。

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