このところ、お葬式や法事に出席したとき、周囲を見回しながら、「昔とは変わったなぁ」と思うことがあります。なにかというとファッション、つまり服装です。
具体的には、かりゆしウェアを着ている人が増えたことです。
かりゆしウェアが喪服として認知されたのがいつからなのかはわかりませんが、いずれにしても現在では特に違和感がなくなっています。
今回は、葬式ファッションという切り口から、喪服版のかりゆしウェアについて考えてみたいと思います。
本来はやはり黒のスーツ
4月から10月くらいにかけての夏場の話ですが、お葬式などで男性が喪服のかりゆしウェアを着用しているのをよく見かけます。女性は現在もワンピースが多いようです。
女性はともかくとして、昔は男性の喪服は黒のスーツに白いワイシャツ、そして黒のネクタイでした。ワイシャツは半袖もありましたが、それでも焼香のときはジャケットを着るのが普通です。故人に対する礼儀からもジャケット着用が望ましいと思われます。
暑いに決まっている!
しかし、いうまでもなく沖縄の真夏、黒のスーツにネクタイは暑いです。冷房の効いている屋内であればまだマシですが、屋根はあるけれど壁がないという、半屋外的な斎場もあって、そちらは冷房が効いていません。
こうした半屋外的な斎場は、市町村などが運営する公営に多いように思われます。真夏の真っ昼間に冷房も効いていないところで、黒スーツを着て焼香のために並んだりすると、下手すれば熱中症になりかねませんし、今考えれば非現実的です。
そもそもかりゆしウェアの元はアロハシャツだが・・・
かりゆしウェアそのものの歴史は意外と古く、最初に発売されたのは1970年でした。もう半世紀も前ということになります。ハワイのアロハシャツを手本にして、沖縄観光をPRするために生まれたそうです。当初の名称は「沖縄シャツ」でした。
しかし、最初はあまり売れませんでした。それが1990年ごろになって名称をかりゆしウェアに改め、普及が進められました。そして、官公庁やマスコミ、さらに銀行や一般企業などでも着用が広がり、ビジネスウェアとして認められるようになったのです。
フォーマルな場で着てもよい?
こうした、アロハシャツを起源とするかりゆしウェアを、黒くすれば喪服として着用してもよいのか、という話ですが、これはもうOKになっているわけです。前述のように夏場のお葬式に出てみれば一目瞭然です。
筆者の記憶によると「喪服にかりゆしは、ありか」という議論すらなかったように思います。ビジネスウェアとして認知されたのですから、黒なら礼服にしてもよいと、社会的な合意が自然にできあがったようです。
くり返しになりますが、黒いスーツを着て汗だくで焼香することを考えると、かりゆしウェアが喪服として認められたのも当然でしょう。
生産者の工夫もあった
ただ、かりゆしウェアを黒にすれば喪服にしてもいいかというと、そう簡単ではなく、作る側もそれなりの工夫をしたようです。そのひとつがポケットです。
男性はあまりバッグなどを持ちません。かりゆしウェアの喪服を着たとき、香典をどう持つかが問題になったのです。
スーツなら内ポケットに入れればいいのですが、かりゆしウェアだと胸ポケットしかなく、しかも小さくて入りません。かといってズボンのポケットに入れると香典袋がしわくちゃになりそうです。手持ちなどは論外です。
そこで、生産者は喪服かりゆしの胸ポケットを大きくしました。これで香典問題は解決。小さな工夫かも知れませんが、効果は抜群でした。
また、かりゆしウェアは通常、開襟なのですが、それを普通のワイシャツのようなスタンダード・タイプにしたりボタン・ダウンにしたり、あるいは立襟にしたりと襟元にも工夫しました。これもかなり効果的で、グッとフォーマルで上品な印象になり、お葬式や法事の場によくマッチしています。
コスト面でもメリットがある
かりゆしウェアの喪服は涼しいだけでなく、値段が安いのもメリットです。普通の礼服は安くても数万円はする一方で着る機会はあまりありません。
しかし、かりゆしウェアならほとんどの商品が1万円以下です。なかには5000円程度の格安品もあります。黒いズボンを持っていればそれが使えるし、白いワイシャツも黒いネクタイも要りません。
しかも、かりゆしウェアの喪服は長袖もあって、沖縄の冬ならば、これでも大丈夫でしょう。
まとめ
かりゆしウェアの喪服は、沖縄の気候・風土に適しています。スーツの礼服に比べて値段が安いのも魅力です。
長袖もあり、季節を問わずお葬式や法事で着用できるので、これからも広がっていくでしょう。