脳の老化を止めたければお口をきれいに!「歯周病」が認知症リスクを高めていた 

お口の健康を保てば認知症のリスクが下がる

皆さん、歯医者さんにはどのくらいの頻度で通っていますか?

月1回、半年に1回といった感じで定期的に通い、口内の健康をこまめにチェックしている意識の高い人もいれば、虫歯になって痛み出したら行くという風に、治療目的でしか利用しない人もいるでしょう。

ただし、後者にあてはまる人は認識を改めたほうがいいかもしれません。

実は、口内の健康をしっかり維持しておけば、アルツハイマー型認知症になるリスクが大きく下がるからです。

そのメカニズムを詳しく説明しているのが、認知症の専門医として20万人以上の認知症患者を診てきた長谷川嘉哉さんの著書『認知症専門医が教える! 脳の老化を止めたければ 歯を守りなさい!』です。

ちなみに、本書では糖尿病、脳卒中、心筋梗塞、誤嚥性肺炎などアルツハイマー型認知症以外の病気も口内環境が影響する例として挙げられていますので、読めば読むほど口内の健康を保つ必要性を切実に感じるでしょう。

口内環境と病気にまつわるさまざまな情報が網羅された本書から、今回は歯周病とアルツハイマー型認知症との関係について書かれた部分を抜粋いたします!

歯周病になると、脳にゴミが溜まる

歯周病を引き起こす歯周病菌が、アルツハイマー型認知症の原因となることがわかっています。

歯周病菌が出す毒素によって歯肉などに炎症が起きると、血液中に炎症物質「サイトカイン」が流れ込みます。

このサイトカインが血液によって脳に流れ込むと、「アミロイドβ」というタンパク質が脳の中で増えるのですが、これが「脳のゴミ」と呼ばれるものです。

アミロイドβは、脳内で記憶を司る「海馬」を中心に少しずつ溜まっていきます。

溜まったゴミに圧迫されて、徐々に脳細胞が死滅。どんどん記憶力が低下していきます。

これがアルツハイマー型認知症の発生・悪化メカニズムだと考えられています。つまり、歯周病になると、脳にゴミが溜まって、アルツハイマー型認知症の発症・悪化リスクが高まるのです。

悪化リスクがどれくらい高まるのかを調べた研究があります。

名古屋市立大大学院の道川誠教授らが行ったマウスを使った実験によると、アルツハイマー病のマウスと、アルツハイマー病でさらに歯周病菌に感染させたマウスを比べた結果、約4か月後には、歯周病菌に感染させたマウスの海馬に沈着した脳のゴミ・アミロイドβ蛋白は、なんと面積で約2.5倍、量で約1.5倍に増えていたそうです。

アミロイドβが脳内に溜まって認知症を発症するまでには、15年ほどかかると言われています。

歯周病を発症する人の年齢のピークは40代後半から60代にかけて。

アルツハイマー型認知症の患者さんの数は70代から急増しますが、まさに歯周病罹患のピークの年代の15年ほどあとと重なっています。

このことからも、歯周病とアルツハイマー病の関わりが推測されます.

また、米フロリダ大学のLakshmyya Kesavalu(ラクシュミヤ・クサヴァル)氏などの研究グループが、アルツハイマー型認知症で亡くなった人の脳を調べたところ、歯周病の原因菌のリーダー格であるプロフィロモナス・ジンジバリス菌が出す毒素、リポポリサッカライド(LPS)が高頻度で検出されました。

一方、アルツハイマー型認知症を発症していない人の脳からは、LPSは検出されていません。

歯周病がアルツハイマー型認知症に影響を及ぼしていることがはっきりとわかったのです。

歯周病にかかっている期間が長ければ長いほど、脳に溜まる脳のゴミの量は増えていると考えられます。

だとすれば、すでに脳のゴミが溜まり始めていると思われる歯周病患者さんは、認知症予防に関して、もう手遅れなのでしょうか?

いいえ、そんなことはありません。

なぜなら、すでに溜まりつつある脳のゴミさえも、正しい歯のケアを行うことで、減らすことができるからです。脳のゴミを減らすメカニズムには、次の2通りがあります。

ひとつは、正しい歯のケアを行って、歯周病菌を徹底的に減らすこと。歯周病菌を減らせば、脳のゴミであるアミロイドβの発生そのものを抑えることができます。

もうひとつは、歯の根元にある歯根膜のポンプ効果で、勢いよくどんどん脳に血流を送り込み、脳内のアミロイドβを押し流すこと。正しい歯みがきで歯周病を予防して、たくさんの歯を温存すれば、それが可能になるのです。

歯で噛むことで、アミロイドβが少なくなることを裏付けるデータがあります。広島大学の研究チームが、よく物を噛むことができるマウスと、もともと歯がなく柔らかい物しか食べられないマウスを比較しました。

すると、歯のないマウスのほうには大脳皮質にアミロイドβが沈着し、さらに、記憶や学習能力に関わる「海馬」の細胞数が少なくなっていたことがわかりました。

歯がないために、脳血流を増やしてアミロイドβを押し流すことができずに、認知症を発症したと思われます。

「8020」ではまだ足りない。めざせ「8028」!

あなたも「8020運動」という言葉をお聞きになったことがあるのではないでしょうか。

これは、「80歳になっても、自分の歯を20本残そう」と、厚生労働省と日本歯科医師会が、1989年から始めた運動です。

大人の歯は、全部で28本が基本です(他にも親知らずが4本ありますが、これは生えてこない人もいるので、基本数に含めません)。

このうち少なくとも20本以上自分の歯があれば、 ほとんどの食べ物を噛みくだくことができ、 死ぬまでおいしく好きなものが食べられて、楽しく健康でいられる。そのような趣旨で始められた運動です。

この運動が功を奏して、厚生労働省が発表した2016年調査では、80~84歳の「8020」達成者が51.2%となりました。

認知症専門医である私から見ても、この運動は素晴らしいと思います。

ただ、個人的な感想を言わせていただくと、私がクリニックで患者さんたちの口の中を見た印象では、残った歯の数が20本というのは、かなりスカスカの状態です。

20本ということは、すでに8本の歯が失われているわけです。

例えば、あなたの上の前歯が4本、下の前歯が4本なくなっているところをイメージしてみてください。

これって「うわぁ、かなりごっそり抜けてるなぁ」という感じではないでしょうか。こんな状態で食事をして、ものを噛んでも、脳にちっとも血流が回らなそうな気がしませんか?

ですから、本気で脳の老化を防ぎたいなら、そして、全身疾患を予防したいなら、「8020」で満足せずに、もっと高いレベルを目指す必要があります。

つまり、「80歳で28本、すべての歯を残す!」という気持ちで、日々の歯みがきを行う必要があるのです。

著者プロフィール
長谷川 嘉哉(はせがわ よしや)さん

●1966年、名古屋市生まれ。名古屋市立大学医学部卒業。医学博士、日本神経学会専門医、日本内科学会専門医、日本老年病学会専門医。毎月1000人の認知症患者を診察する、日本有数の脳神経内科、認知症の専門医。

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