沖縄伝説・風習シリーズ「今さら聞けない、ジュウルクニチって、なに?」~シーミー、お彼岸と並ぶお墓イベントの話~

お盆が終わり、お彼岸も過ぎて涼しくなりました。このあとの冬場におけるお墓系イベントといえばジュウルクニチでしょう。

しかし、ジュウルクニチは、本島中南部ではあまり一般的ではなく、そのせいで知名度がそれほど高くない行事でもあります。

ただ、結婚などで新しい縁ができると、ジュウルクニチと関わることもあります。年が明け、お正月が過ぎるとシーズンになりますので、今回はジュウルクニチについておさらいしてみたいと思います。

★沖縄の伝説・風習シリーズについてのご理解ご協力へのお願いをコラムの最後に書かせて頂いていますので読んで頂ければ幸いです。

※ふう しゅう 【風習】

その地域社会で、人々が長年に渡って伝えててきた生活や行事の独特のならわし。しきたり
風俗習慣

やんばるでは一年でもっとも渋滞する日だったりする

数年前のお正月も過ぎたある日、ドライブ中に本島北部で渋滞に出くわしました。観光のオフシーズンだし、日曜日だし、道路が混むようなタイミングではありません。よく見ると国道沿いのお墓に人がいっぱいいました。

これが1月16日でした。後で知ったのですが、ジュウルクニチのお墓参りの人々だったのです。しかも、日曜日で天気もよかったので、多くの人が繰り出したのでしょう。

本島北部や宮古・八重山地域などで行われる

ジュウルクニチは、グソー(あの世)のお正月といわれます。一般に沖縄では4月ごろにシーミーでお墓参りをするのですが、シーミーではなく、ジュウルクニチにお参りする地域もあります。たとえば前述の本島北部や宮古・八重山地域などです。

離島ではお正月に帰郷せず、ジュウルクニチに合わせて里帰りする人も多いようです。このために、その前後は飛行機の席が取りづらく、フェリーも混雑するといいます。

また、宮古や八重山地域ではこの日、学校が午前中までとなり、会社も早く終業したりします。午後はお墓参りに行くためです。

帰郷できない人はふるさとの方向に手を合わせる

ジュウルクニチは、もともと旧暦の1月16日に行われる行事です。ただし、最近は新暦の1月16日や、前後の土日や祝日に行われることもあるようです。

やることは、ほぼシーミーと同じです。重箱料理やお餅、果物、お酒などを供え、線香を上げて手を合わせます。また、ウチカビを燃やすところもあります。

礼拝が済んだら、みんなでごちそういただきながら歓談し、お酒を飲んだりします。

特に離島では、非常に大事な行事とされており、それに合わせて帰郷できない人が那覇港近くの三重城で、ふるさとの方向に手を合わせている姿が見られます。

シーミーとは違い、法事に近い

一年以内に亡くなった人がいる家では、ミージュウルクニチといって特に盛大に行います。これは供養の意味があるからです。家族が亡くなって一年以内は喪中なので、お正月は祝いませんが、ジュウルクニチはみんなでお墓参りをします。

ただし、亡くなった人の四十九日が明けないうちにジュウルクニチが来た場合は、お参りなどはしないケースが多いようです。

喪中ではシーミーをしないのに対し、ジュウルクニチができるのは供養の行事だからでしょう。そのためかも知れませんが、シーミーのときの重箱料理に入れるかまぼこは紅白なのに、ジュウルクニチの場合は白かまぼこだけにします。

ちなみに、シーミーの重箱料理に紅白かまぼこを入れるのは、お墓参りではあってもお祝いの側面があるからだとされます。また、お餅もシーミーの際にはあん入りも用意するのに対し、ジュウルクニチではなにも入っていない白もちを使います。

つまり、簡単にいえば、シーミーはお祝いでありジュウルクニチは法事に近いのです。

台湾系の人たちがジュウルクニチに変更

ジュウルクニチは鹿児島県の奄美大島でも行われていますが、南の石垣島では台湾からの移住者やその子孫たちの一部も行っています

もともと台湾では、シーミー(清明祭)としてお墓参りをしていますが、移住者の一部は八重山の習慣と同化するように、ジュウルクニチに変えたといいます。

ふるさとの習慣を押し通せば、移住先の社会でまわりとあつれきを起こしかねません。そこで合わせるために、お墓参りの時期を変更したといいます。郷に入れば郷に従えということなのでしょうか。

ただし、線香はわざわざ台湾から取り寄せた太くて長いものを使うそうです。このあたりは、まわりと強調しながらも、さりげなくアイデンティティを主張しているようで興味深い点です。

まとめ

ジュウルクニチはシーミーと似ているように思われますが、前者が法事に近い行事であるのに対し、後者はお祝いという位置付けになります。

そのため、喪中ではシーミーは行えませんが、ジュウルクニチはできるということになります。また、料理でもやや違いがあります。

したがって、シーミーの習慣に親しんだ人が、結婚その他でジュウルクニチを行う家庭と関わるようになったときには、その違いを頭に入れておいた方がいいでしょう。

石垣島に住む台湾系の人たちの一部では、島社会に同化するために、シーミーをジュウルクニチに変えてお墓参りをするケースも見られます。

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