相続問題やお墓のことなど、自分の死後、残された家族に迷惑をかけないようにあらかじめ対策を立てておくのは大事なことです。死後の憂いをなくせば、その分残りの人生も楽しく過ごすことができるでしょう。
一方で、自分の死後のことだけ考えていればいいとは限りません。というのも近年は人生100年時代ともいわれ、超高齢化社会がますます進んでいるからです。そうなると、たとえばある人が60歳になり、そろそろ死後のことを考えるようになったとき、親も健在というケースが十分あり得るのです。
親自身が死後のことを十分に考えて対策をしていれば問題ないのですが、そうでない場合もあるでしょう。すると、いろいろ不都合が起きてきます。代表的なのは実家の空き家問題です。
今回は社会的にも注目されている空き家問題について考えてみます。
実家を空き家にするとさまざまなデメリットが
第2次世界大戦が終結した後の1947年~1949年に生まれた、いわゆる団塊の世代が後期高齢者となる2025年ごろには、日本人の約3分の1が高齢者となることが予想されています。さらにその10年後の2035年には団塊の世代が平均寿命の年齢になり、亡くなる人が増えます。すると超高齢化社会がさらに進んで多死社会を迎えることになるでしょう。
親が亡くなった後、相続した実家に住むのならそれほど問題にならないでしょうが、だれも住まない場合、当然空き家になります。それなら売却したり、賃貸に出したりするという手もあるのですが、物件によっては買い手や借り手がなかなか見つからなかったりもします。
だからといって放置しておけば建物はどんどん老朽化し、庭は雑草がボーボーのまさに廃屋と化します。いずれ家は倒壊し、塀も倒れてしまうかもしれません。すると隣近所にも迷惑をかけ、損害賠償を請求されることすら考えられます。
さらに、誰も住まず、利益を生まないのに固定資産税はきっちり取られます。こうなると、本来メリットを生むはずの不動産がマイナスしか生まない負動産となってしまいます。
親が亡くなった後、実家の空き家化が予想されるなら、まだ健在のうちにその対策を考えておくべきでしょう。そこで、空き家になりそうな実家をどうするか、です。
まず片づける
親が高齢化してくると体力が落ちたり、病気になったりで整理整頓がなかなかできなくなる場合があります。家の中が散らかっているのを放っておくと、親が亡くなった後にも悪影響を及ぼすことがあります。
というのも、故人との思い出が詰まったモノが残っていると、なかなか捨てられないからです。そのため、気がついたら実家は空き家になっているだけでなく、ゴミ屋敷化してしまいかねません。したがって、実家を荒廃させないためにまずは親が存命中に、できれば相談もしながら生前整理をしておくべきなのです。
リバースモーゲージを利用する
近年テレビCMもちらほら見られるようになったリバースモーゲージ。財産は自宅の土地建物のみという高齢者が多い日本社会にマッチしたシステムとして注目度も増しています。
リバースモーゲージは簡単にいうと、自宅を担保にして銀行などの金融機関からお金を借り、それを分割して毎月受け取るというもので、そのお金を生活資金にすることができます。そして亡くなったときに自宅を処分して借金を清算します。
親は最後まで住み慣れた家で、しかも経済的にもゆとりを持って生活でき、子は親が亡くなった後に実家の管理に頭を悩ますこともありません。
また、国が創設した長期生活支援資金貸付制度は、公的なリバースモーゲージということができます。これは65歳以上の高齢者で土地を所有しながらも低所得な人を対象とします。土地の評価額の7割程度を限度として融資されるもので、融資期間中は返済義務がなく、借受人が亡くなった場合などに土地を処分して返済にあてるというものです。
親が存命中に売っておく
実家が将来的に負動産となるくらいなら、親には老人ホームに入居してもらい、売ってしまうのもひとつの手です。親自身の気持ちや、相続権者が複数いる場合などには話し合いが難航することも予想されますが、売却で入るお金の分配などもきちんとしておけば、後顧の憂いがなくなります。
売ったお金をお墓の購入代金に回すことができれば、なおいいかもしれませんね。
まとめ
平均寿命が延びるのはもちろんよいことですし、その中で自らの人生を整理し、残された者にできるだけ負担をかけないようにするという風潮も時代にマッチしたことでしょう。その一環として空き家という負動産を残さないようにするのは、とても重要なことです。
また、子にとっても親の家の処理をサポートするのは、自分の人生の総括においてもいい経験となるでしょう。人生100年時代に親子での家の問題を考えるのは、とても有意義なものと思われます。