お墓の継承はどうする?継承者の選定や相続について

継承

先祖代々守ってきたお墓を自分の子に継承したいとお考えの方は特に沖縄では多いでしょう。

沖縄は本土に比べお墓のサイズが大きくそれこそ何年もお墓が継承できるよう丈夫な石材を使用したり、定期的なメンテナンスや改葬などを行う方も最近では増えてきています。

お墓を継ぐ際に必要な手続きや、税金関係また、考えられるトラブルや回避策などについて詳しくお話ししていこうと思います。

祭祀財産とは

お墓関係が相続の問題にかかわる際によく聞かれる言葉があります。それは「祭祀財産」というキーワードです。祭祀財産とは、課税の対象にならない財産の事です。お墓には遺産を相続する際にかかってくる相続税や土地建物にかかる固定資産税等がかかりません。

沖縄のお墓で独特なのが地域によってある「門中墓」という大きな規模のお墓です。門中墓を継承している方も多くいるので、その継承する人物を決める際やお墓参りの方法など地域やその門中ならではの決まりやしきたりが存在します。

祭祀財産は税金などがかかる事はありませんが、継承者にはお墓を守るという責任、法要や清明祭の際に日程や段取りを取り仕切る事になります。

長年にわたって継続していくのは大変な事で、加えて継承者の高齢化が進むと維持できない等のトラブルが生じるケースもあります。祭祀財産は継承者やその身内で継続的に守っていかなくてはいけない財産ともいえます。

また相続できる他の財産と異なるのが「相続人は一人のみ」となる事です。そのことから、配偶者、もしくは長子が継承する事が多くあり、これは現代でもかわりません。

お墓の継承者の選び方

沖縄では昔からの習わしでその家の長男がお墓を継承する事が多いです。

家を継ぐのと同様に仏壇やお墓を守っていくのも長男の役目とされてきました。上記でお話しした「門中墓」は基本的にその家の長兄が継いでいくことになっています。

現代においてはどうでしょうか?

沖縄でも地域によっては「門中墓」ではなく、個人墓が主流になっているところが多くあります。少し前に建てられたお墓の形状は亀甲墓は破風墓が中心です。

「祭祀財産」の定義としてあるように継承する人物は一人のみとされているため、その家の長となり得る人物(長兄や配偶者)が継ぐことが大半です。

しかし、必ずしも長兄や配偶者が継承しなければいけないというわけではありません。

家庭には様々な状況や処遇があるので、ケースバイケースで話し合いを重ね、一族の納得がいくかたちで進められる事がほとんどです。ところが、話し合いが難航しトラブルに発展するケースもありますので注意が必要です。

お墓の継承方法

お墓を継ぐ人物が決まればいよいよ本格的に継承の準備に取り掛かります。ですが、「継承」とはいうものの特別な儀式を行うわけでもなければ、それを強制するあるいは取り締まる法律も条例も存在しません。

極端な話、一度お墓を継ぐと言っても途中何らかの理由で墓守としての役割、法事やお墓参りなどに手が回らなかった場合でも罰せられる事はありません。だからと言っていわゆる財産の放棄といったかたちで正式に書面にしたり手続きを行う事も必要ありません。

そのためトラブルに発展した時に大きな問題が生じてしまったり、その問題がなかなか終結せず尾を引いてしまう事があります。

何が起こるか誰にも予想できない人生ですので、「もしも」や「万が一」が起こる事も想定しておきましょう。また、お墓を継承したとしても執り行う祭祀の方法やお墓の継承が困難になった場合の改葬(お墓の引っ越し)や墓じまいも継承者の自由です。

もちろん誰にも相談せずに行うとトラブルに発展する可能性が高いのでその場合は慎重な話し合いが必要です。

手続き、手数料について

お墓の所有者が亡くなったり、お墓の継承を決めた時に必要になる手続きや手数料について知っておいたほうがいいのが手続き、手数料についてです。沖縄に多い個人墓の継承に関する手続きと霊園墓地を使用している場合の手続きをご紹介します。

個人墓地の場合

個人墓地の場合には不動産の手続きと変わりません。(不動産の扱いですが祭祀財産の為、課税の対象にはなりません)必要な手続きは「名義変更」「相続登記」の二つです。

名義変更は法務局での手続きになります。必要書類を提出し手続きを行います。(名義変更に必要な書類は「戸籍事項証明書」と「遺産分割協議書」)戸籍事項証明書には全部と個人があります。

あまり耳馴染みがないかと思いますが、「戸籍全部事項証明書=戸籍謄本」「戸籍個人事項証明書=戸籍抄本」と捉えましょう。これは市役所や役場等で取得する事が出来ます。

「遺産分割協議書」とは、相続人が複数いた場合に遺産を相続するために分割方法や割合などを協議し決定事項を記載するものです。この書類は、トラブル回避のために作成するケースも多いです。

協議が行われた時の決定事項等が記載されているこの書類は「契約書」と似た性質を持っていて、協議した内容を証明する有効な書類と言えます。(「分割」とあるが、お墓の継承者は一人のみに限定されているので、「この継承者で間違いないです」といった証明の意味で使われます)

お墓というのは課税対象になる財産ではありませんが個人の所有地扱いになるので、手続き上の理由から全員の捺印がされており、信頼度の高い遺産分割協議書が必要にです。

また、「門中墓」の場合も同様の手続きが有効です。ただし門中墓の場合、特有の決まりが存在するので独断で行うのではなく、門中との話し合いが不可欠です。

霊園墓地の場合

次に霊園の場合は所有している土地というわけではなく、「永代に渡ってその土地を使用する権利」を霊園から借りています。私有地ではないため、名義変更が必要な際には、各霊園の規約に沿って手続きを行います。

各霊園によって用意する書類が違います。事前に各々の霊園に問い合わせましょう。霊園によっては、上記にある「遺産分割協議書」や名前が載っている全員の戸籍抄本が必要な霊園もあります。

継承で起こる問題

お墓を継ぐという事は決して容易な事ではありません。例えば年に一回の清明祭でのお墓参りもスケジュールの段取りやお供え物の準備、お墓掃除など時間も手間も費用面でも執り行う方の負担になります。

お墓を継承する者は、金銭的にも体力面でも少なからず負担がかかる事を頭において「お墓を継ぐ決断」をしなければいけません。とはいえ、親戚や家族の協力のもと自分一人で執り行うのではなく、皆でお墓を守っているという自覚を一人一人が理解していれば関係が悪化する事もなく継承者の負担も軽減されることでしょう。

ここでは、お墓の継承に関係するトラブルや事例についてお話ししたいと思います。

継承の拒否

上記でも記載しているように、お墓の継承には体力的な負担、金銭的な負担が伴います。それだけに墓守を一手に担う自信がなく継承を泣く泣く拒否する方も居られます。先祖代々大切に守り抜いてきたお墓ですので簡単な決断ではないでしょう。

苦渋の決断として拒否を選択した場合でも特に必要な手続き等はありません。ただし、「祭祀財産の放棄」となるので証明として念のため書面などにしたためておくと良いでしょう。その際、お墓の今後について家族や親族としっかり話し合う事が必要です。

継承者がまだ子供

特別な事情で未成年が継承者になるケースもあります。遺産を相続する立場の人物がたとえ未成年であっても、相続する権利は発生します。(法に従って未成年後見人が選出されます)

未成年だと継承が出来ないというわけではありませんが、未成年後見人の選出後の手続きに時間や労力がかかる事が予想されます。

未成年後見人は対象児童が成人になるまでの期間の保護者、または法定代理人としての役割がありますので、お墓の継承についての判断も担う事になります。

継承者がいない

近年増えているケースでお墓を継承する人がいない事があります。お墓の所有者が高齢である、または継承した者の後に続く人物がいない場合、さらに継承するお墓が遠方にありお墓参りが困難などの方もこれに該当します。

継承者がいないケースでは「改葬」や「墓じまい」を視野に入れて行動する事になるでしょう。自分の住む地域や生活圏内にお墓を引っ越す(改葬)ことでお墓を守っていく方法、またはご自身の代で判断の出来るうちに墓じまいを行う方法もあります。後者の場合、無縁墓となる事を事前に防ぐことにもつながります。

現代では決して珍しいケースではないので、お墓業者やその道のプロにアドバイスも貰って行動しても良いでしょう。

まとめ

今回とり上げた「お墓の継承について」はお客様の深い悩みの一つでもありました。現代では、核家族化の影響や人々の生活する場所やスタイルの多様化などで満場一致で継承が滞りなくすすむケースの方が減っています。

お墓を継ぐというのは、それだけプレッシャーや体力的、経済的な負担が継承者にかかってきます。もちろん周りにいる家族や親族の協力があれば、負担も軽くなり継承者が不満を感じたり、プレッシャーを重く感じる事が少なくて済むはずです。

ご自身がお墓を継ぐ立場、お墓を継ぐ人を支える立場、どのポジションにいたとしても協力や助け合い、理解をもって向き合う事が大切です。

沖縄ではお墓参り(清明祭)は家族や親戚が集まり賑やかな雰囲気の中で行われます。

日頃の感謝や近況の報告、これからも見守っていてくださるよう祈りを捧げます。親戚が顔を合わすのでそれなりのスペースを必要とします。その為、納骨するスペースも本土のお墓に比べ大きく造られており、皆が座るスペースも大きめにとられています。その光景はまるでピクニックのようです。

沖縄の風習ではありますが、墓じまいや改葬をするからといって、後ろめたさや後悔を残す事がないよう、またトラブル回避の為に家族や親族ともよく話し合い決断する事をおすすめします。

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