突然ですが「ヌジファ」 という言葉は存知でしょうか?沖縄の方なら知っている方も多いかと思います。
ヌジファの「ヌジ」は「魂」、「ファ」は「抜く」という意味を表し、沖縄古来の魂を抜くための儀式です。沖縄では古来から「故人の魂は体から離れてその場所に留まる」とされてきました。つまり、亡くなった場所が病室であれば魂は病室に留まります。
その場所に留まってしまった魂を供養するのがヌジファです。
実はこのヌジファはご遺族でも簡単にできます。今回はお通夜前に行うヌジファのやり方をお伝えしていきます。
なぜお通夜前にヌジファを行うのか?
沖縄では基本的にヌジファをお通夜前に行います。ではなぜお通夜前に行うのでしょうか?
この理由は、お通夜前が一番シンプルにヌジファを行えるからです。
実は体から離れた魂はその場その場に留まります。例えば、亡くなった場所、ご遺体を移動した場所、遺骨を移動した場所などです。
そのため、後々になるほどヌジファの儀式が複雑になってしまうのです。
具体的にはこれらの魂が留まっている場所やその地域の御嶽、故人のお墓などでも儀式をしなければいけなくなります。
お通夜前にヌジファを行う場合には下記3つの場所で行うと良いでしょう。
①亡くなった場所
②ご遺体を移動した場所
③遺骨を移動した場所
ヌジファを行うために必要なもの
ヌジファを行うために必要な道具が5つあります。
①白い封筒
②白い紙
③紙で包んだ塩
④ヒラウコー12本(沖縄の線香)
⑤サン
です。
これらをヌジファを行う場所ごとに数セット準備しておくと良いと思います。ここで「サン」について知らない方も多いのではないでしょうか?
「サン」とはススキの葉っぱを使った沖縄で馴染みのある呪具です。具体的な作り方ですが
①葉先で大きめの輪を描いて、後ろに回し、葉先を通す。(まだぎゅっと締めないでください。)
②通した葉先をさらに丸く描いて、元の輪に葉先を通しながら、茎を引っ張って、適度な大きさの輪になるように締めてください。
いわゆる「方結び」の片方が輪になった状態です。
詳細なやり方はこちらの方の動画で解説されてます。
https://www.youtube.com/watch?v=FQ6VFbYxxGY
沖縄では、このサンはヌジファだけでなく、様々な儀式や行事に用いられることもあります。
亡くなった場所でのヌジファ
近年ではほとんどの方が病院で最期の時を迎えるため、ここでは病室でのヌジファを例として方法をお伝えします。
①ヒラウコーは火をつけない状態で、足元から頭に向けて2~3回大きく円を描くように動かします。
②グイス(後述します)を唱えて拝み、「「〇〇さん、これからお家まで帰るので魂も一緒に付いてきてくださいね。」と、故人へ声をかけます。
③白い封筒にお塩を入れ、そこに使用したヒラウコーを白紙にくるんで入れてください。
④ヒラウコーを入れた封筒は故人の懐にしまって、サンを故人のご遺体の傍に置きます。
⑤ここで病室を出ますが、出るときはご遺体は足側から退出するようにしてください。
⑥続けてご遺族が退出します。この時、一度退出したら二度と戻ることはできません。(忘れ物などは入念に確認して退出してください。)一度退出したら病室を振り返り見ることは避けましょう。
以上が病室でおこなうヌジファの流れです。
この流れは病室だけでなく事故現場など別の場所で行っていただいても問題ありません。
ご遺体を移動した場所で行うヌジファ
次はご遺体が移動した先でのヌジファです。ここでは、例えば病院から自宅へご遺体を移動したとしてヌジファの方法をお伝えします。
自宅では抜いた魂を灯してご遺体に戻す儀式、「ヌジファの結び」を行います。
①病院でのヌジファの際に故人の懐にしまっておいたヒラウコーに火をつけます。
②ヒラウコーを枕飾りにあるウコール(香炉)に拝した後、魂をともすグイス(後述します)を唱えます。
ここでもしもウコール(香炉)がない場合にはそのまま火葬しても問題はありません。むしろ近年ではそのまま火葬する場合の方が多いです。
ヌジファで唱えるグイスとは
ヌジファの際に唱えるグイスには、魂を抜く儀式の時と、再び魂を灯す儀式の時の2種類があります。
①魂を抜くときに唱えるグイス
「ウートゥートゥ、〇〇ヌ ウマウトーティ クヌユー ウシナイビタン(〇〇が今宵、コチラで亡くなりました。)
クマカラ ヌジファサビティ ヤンカイウトゥム ウンチケーサビィグトゥ(これからヌジファをして、家までお供します。)
〇〇ヌタマシーヤ クヌ ウコーニ ヌイクディ クィミソーチ(〇〇さんの魂もこのヒラウコーに移ってください。)
マジュンウトゥムゥ ウンチケェシミティ ウタビミスーリ ウートゥートゥ(一緒にお供させていただきますよう、どうぞ宜しくお願いします。)」
②魂に火を灯すときに唱えるグイス
「ウートゥートゥー、〇〇ヤーンカイ ウトゥムウンチケーシチャビタン(〇〇さん、お家までお供いたしました。)
ムヌウドゥルチ ソラヌリウムヤビーシガドーリン タマシーヌチキティ クィミソーチ(驚いていることと思いますが、どうぞ魂を付けてくださり、)
マタ マユインシミソーラングトゥニ グソークラク ジョウブツシゥタビミスーリー(また、迷うことなく、極楽浄土まで成仏してください。)」
まとめ
今回はお通夜前に行うヌジファの理由とやり方をお伝えしました。
このように見てみると、必要な道具も複雑ではなく、実際の儀式もご家族間で簡単に行えるものだと思ってもらえたかと思います。
お通夜ではヌジファだけでなく、火葬許可書の受理など他にも行わなければいけないことがたくさんあります。
故人が亡くなってパニックになっているとは思いますが、そんなときにでもきちんと故人を送り出してあげられるようにヌジファのやり方を知っておいて準備をしておくことも重要です。