遠距離介護とは、離れた場所に住みながらも、老親の日常生活を支えるために通って介護する方法を指します。高齢化が進み、介護を必要とする期間の長期化が指摘されるなかで、支える家族としては、無理なく介護を続けられるように工夫することが大切です。その一つの方法として、遠距離介護があります。
親が要介護状態になっても、現状からの変更を最小限に留めて、それぞれの生活を続けるため、遠距離介護という方法を取る家族も少なくありません。
そこで今回は、遠距離介護を始める前に準備する内容を紹介するとともに、遠距離介護のメリットやデメリット、成功させるためのポイントなどを解説します。
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遠距離介護とは
遠距離介護は、国や自治体によって内容が規定されている訳ではありませんが、概ね下記のようなケースが当てはまります。
項目内容誰が親と離れて生活する子等が何のために要介護状態にある老親の生活を支えるためどのように同居せずに必要に応じて彼らのもとへ通い何をする介護・サポートすること
つまり、親が要介護状態になったとしても同居せずに、それぞれの生活を維持しながら、通って介護する・支えるというスタイルだといえます。
遠距離介護が必要となる背景
遠距離介護が必要となる背景にはどのようなものがあるのでしょうか。かつて老親の介護は子の務めと言われていた時代では、年老いた親の面倒を見るのは子どもとして当たり前の役割でした。
しかし現代では、高齢者の単独世帯・老夫婦世帯の増加、核家族化の進展により、親は地方に、子は都市部に住むといったライフスタイルが一般的になりました。
このようなことから、親が要介護状態になった場合でも、別々に暮らすスタイルを取り、仕事を続けながら親元へ通って介護する遠距離介護のニーズが高まってきたといえるでしょう。
★現在、国は雇用保険制度のなかに介護休業制度を設けて介護離職ゼロを目指し、現役世代の方々が仕事と介護を両立できるように支援する動きが広がっています。今や遠距離介護は決して珍しいスタイルではなく、むしろニーズは高まっていくと考えられます。
遠距離介護を選択する理由・原因
遠距離介護を選ぶ理由にはどのようなものがあるのでしょうか。次に示すように親・子の都合や希望によって、遠距離介護を選択するケースがあります
登場人物理由・原因親の都合・希望・住み慣れた地域・自宅で生活したい
・子供の呼び寄せに応じても、新しい土地に馴染めるか不安
・かかりつけの病院・施設で、引き続き医療や介護を受けたい
・できるだけ子供に迷惑をかけたくない子の都合・希望・経済的な理由で、仕事を辞める(転職する)ことができない
・親と同居したとしても、配偶者・孫に迷惑がかかってしまう
・別居した状態で現在のライフスタイルを継続したい
上記を見ると、それぞれのライフスタイルを継続するにあたって、遠距離介護という方法を取る、あるいは取らざるを得ないケースがあることが分かります。
遠距離介護を始める前に準備すること
遠距離介護を始める前には、幾つかの準備が必要です。親との住まいが遠距離であり、要介護状態になって慌てて準備を始めるのではなく、介護することを見越して情報収集するなど、準備をしておくことが理想です。下記に準備する内容を紹介します。
1:親の希望を聞く
親が要介護状態になった後の生活について、どのような希望を持っているかを聞き取ります。帰省した時や電話などで、まめにコミュニケーションを取っておくと良いでしょう。ただし、親の希望や意思はその時の状況によって変化することもあるため、重要なことは複数回に渡って確認することが大切です。
また、親が子供に介護してもらうということは、親の立場として結論に至るまでのプライドや葛藤がある方もいるはずです。そのため、できるだけ傷つけたり、不安を煽ったりすることが無いように注意しましょう。
2:親の体調を確認する
親の既往歴(これまでにどのような疾患に罹ったか)を確認するとともに、現在患っている病気や健康上の不安などを把握しておくことが大切です。また、かかりつけ医の有無もこの際に確認しましょう。
3:遠距離介護に関する費用を確認する
遠距離介護の費用に充てるため、下記の内容を確認・把握しておきましょう。
● 親の経済状況(年金額、預貯金の額など)
●親が加入している保険(社会保険、民間保険の有無と保険料の額)
●月々の生活費や医療費など
これらの状況を把握して、必要となる介護費用が賄えるのか、シミュレーションしておくことが重要です。親と金銭面の話し合いをすることに躊躇してしまう場合もありますが、この確認を疎かにしてしまうことで、介護費用の負担をめぐって家庭内・親族間の金銭トラブルに発展する恐れがあるため注意が必要です。
4:介護サービスに関する情報収集
親が利用する可能性のある介護サービスの内容や、施設に関する情報を収集しましょう。高齢期には介護保険制度に基づく介護サービスを利用するのが一般的で、下記の3つに分かれています。
種類具体的なサービス居宅サービス要介護者が自宅にいて利用する訪問介護、通所介護などのサービス施設サービス特別養護老人ホームや、介護老人保健施設などの介護施設に入所するサービスその他住宅改修、福祉用具のレンタル・購入などのサービス
自宅で生活する場合には居宅サービスを利用して、心身状況が悪化して自宅での生活が困難になった場合には、施設サービスの利用(介護施設への入所)を検討する必要があります。
特別養護老人ホームなどの費用は安いが、入居までに時間のかかる可能性が高い介護保険施設だけでなく、スムーズに入居しやすい有料老人ホームも含めて近隣の介護施設に関する情報も収集することをおすすめします。
施設によっては、運営理念やサービス方針、費用が異なります。また、施設ごとに入所の条件を設けている場合があるため注意しましょう。
介護サービスの情報を収集するためには、自治体のホームページを利用すると良いでしょう。「ホームページでは分からない」「詳しく知りたい」という方には、相談機関である地域包括支援センターが役立ちます。
地域包括支援センターは、地域に住む高齢者の介護問題に関する相談を無料で受け付けてくれる機関で、必要に応じて情報の提供をしてくれます。
親の住んでいる場所を管轄する地域包括支援センターに連絡し、現在の状況を伝えて必要な情報を提供してもらえるよう、今のうちから関係づくりをしておくと良いでしょう。
・都道府県別で各自治体の情報を知りたい方⇒こちら
・都道府県別で地域包括支援センターの情報を知りたい方⇒こちら
遠距離介護のメリット
遠距離介護のメリットについて解説します。
1:介護ストレスの軽減
遠距離介護では介護ストレスを軽減することができます。同居をしないことで子供は仕事や環境を変える必要がなく、また親も住み慣れた土地で、互いにこれまでの生活を維持することができます。親子共にプライベートの時間を確保しやすく、必要に応じて介護サービスを利用すれば、介護ストレスをより軽減することができます。
2:身体的疲労の軽減
遠距離介護では身体的疲労を軽減することができます。当然ながら、同居していると常時介護をしなければならない状況であるため、疲労度が高まることが多くなります。遠距離介護の場合、「親元へ通う手間」によっての身体的負担はあるものの、同居して終日介護する場合の身体的疲労と比べて負担が少ないことが多いです。
3:介護保険サービスが受けやすい
遠距離介護をしている場合、訪問介護などの介護保険サービスを受けやすくなります。親子で同居していないことから、親として同居人とのスケジュール調整が不要となるため、介護保険サービスが受けやすくなります。
遠距離介護のデメリット
メリットがある一方で、遠距離介護にはデメリットもあります。
1:緊急時にすぐの対応ができない
遠距離介護の場合、緊急時にすぐ対応することが難しいです。親が急な病気に罹ったり、大きな事故に遭ったりした場合、すぐに駆けつけることができません。また、常時親の様子を確認することができないことから、ちょっとした変化や小さな異変に気づかず見逃してしまう可能性もあります。
2:費用がかさむ
遠距離介護では費用がかさむ場合があります。別居しているということは、家庭によっては家賃や光熱費などの生活費を負担しなければいけない場合があることや、遠方の場合には往来のための交通費も必要になります。また、同居できない代わりに、親が多くの介護サービスを利用した場合、その費用がかさみます。
介護保険制度では、要介護区分に応じて利用できるサービスの量・内容に制限があります(居宅サービスの場合)。この制限を超えてサービスを利用した場合には、超過分を全額自己負担しなければならないため、注意が必要です。
3:介護状況の管理(把握)が難しい
遠距離介護は、介護状況の管理(把握)が難しいです。親がどのような介護サービスを利用しているのか、その場面を直接見ている訳ではないため、管理が難しくなります。
どこのサービス事業者が、どのくらいの頻度で、どのようなサービスを提供していて、親とどのような人間関係を築いているのか、そして、どのくらいの費用負担になっているのか、管理・把握することが難しい点はデメリットの1つになります。
遠距離介護を成功させるためのポイント
ここまで、遠距離介護の概要と、メリットやデメリットについて解説してきました。ここからは、遠距離介護を成功させるためのポイントを紹介します。
1:信頼できる支援者の確保
親の生活・介護に関して相談できる支援者や支援機関を確保しましょう。親と離れて暮らす子としては、親がどのような生活をしているのか気になります。支援者や支援機関の担当者と繋がっていれば、親の生活に変化があった場合には必要に応じて連絡をくれます。支援者や機関は様々なものがありますが、代表例としては下記のとおりです。
●親の親しい友人、親族など
●親の住む地域を担当する地域包括支援センターの職員
●親のケアプラン作成を担当する居宅介護支援事業所の介護支援専門員(ケアマネジャー)
●親の通院する病院のメディカルソーシャルワーカー
など、子供にとって、親の生活を支えてくれる支援者や支援機関は心強い存在です。継続的なコミュニケーションを取り、共に親の生活を支援するような体制を作りましょう。
2:継続的なコミュニケーション
親と離れて暮らしていると、コミュニケーションが疎かになりがちです。電話したとしても、確認事項だけの必要最低限のコミュニケーションになっていませんか?
電話やメール、ビデオ通話などの様々な手段で、親と継続的なコミュニケーションを取り、小さな変化に気づけるようにアンテナを張っておくことが大切です。
また、上記で紹介した支援者や支援機関とのコミュニケーションも重要なため、親の様子や体調に変化があった場合には、必要に応じて支援機関との情報を共有しましょう。
3:周囲を頼りにする
遠距離介護では、周囲を頼りにすることも重要です。専門機関だけで支えることは困難な場合、親の近所にいる親戚や友人、地域のボランティアなど、周囲の人を頼ることも検討しましょう。日常的な声かけや見守り活動などで、地域全体で親を包み込んでくれるような体制が理想です。
4:家族との役割分担
遠距離介護では、家族と役割を分担することが大切です。特に一定の人に介護の負担が偏りがちになるケースもあるため、すべてを抱え込ませないように、継続的に家族同士で話し合い、協力し合いながら役割や負担を分担(分散)するようにしましょう。
遠距離介護でお悩みの方は一般社団法人 終活協議会が全力サポートします
今回は遠距離介護について解説しました。現代では、たとえ親が要介護状態になったとしても子供が遠距離介護という方法を通して支援することが珍しくありません。
今回紹介した遠距離介護のメリットやデメリットを踏まえたうえで、十分な準備と成功させるための工夫を行い、親と子の双方にとって負担のない遠距離介護を続けることが理想です。また、専門機関・専門職、周囲の人に頼るのも大切なことです。親の介護問題や一人暮らしについて不安がある場合は、地域包括支援センターに相談して、万が一のときに備えておくと良いでしょう。
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監修
菊田あや子終活協議会理事下関市出身、日本大学芸術学部放送学科卒業。
在学中にラジオでプロデビューしワイドショーリポーターで全国を飛び回る。90年代のグルメブーム以降、「日本一食べている女性リポーター」となりグルメ・温泉・旅番組で、持ち前の明るいキャラクターで活躍。
近年は「食育
「介護」等の内容で全国に講演活動中。
2020年最愛の母を94歳で看取り、一般社団法人終活協議会と出会い理事に就任。
還暦のおひとり様であり終活の必要性を広く発信中。
遠距離介護とは?準備で必要なことや成功のポイントを業界関係者が解説 | 終活コラム | 終活サポートなら終活協議会 (shukatsu-kyougikai.com) の記事より転送させて頂きました。