(写真/PIXTA)
東京カンテイが、『シニア向け分譲マンション』の供給動向について分析した結果を公表した。
ところで、シニア向け分譲マンションとはどういったものか、ご存じだろうか?
分析結果を参考にして、その実態を見ていこう。
【今週の住活トピック】
「『シニア向け分譲マンション』の供給動向分析」を公表/東京カンテイ
シニア向け分譲マンションとはどんなもの?
東京カンテイが分析したのは、これまで供給された(2023年までに竣工予定のものを含む)
全国の98物件、1万4947戸(2022年6月末時点)のシニア向け分譲マンションについてだ。
『シニア向け分譲マンション』について、東京カンテイでは、区分所有建物(いわゆるマンション)であること、などの同社のデータベース登録基準に合致するという前提の下で、次のように定義している。
・敷地内にケア施設がある、または一棟全体が高齢者に配慮した設計である
・管理費とは別にケア関連サービスを受けるための費用条項がある
分譲マンションなので、購入して所有権を持ち、売却したり相続させたりすることができる。
一般的な分譲マンションと違うのは、ハードとなる建物はバリアフリーなど高齢者が安全に住むことへの配慮がなされ、ソフト面では高齢者が望むさまざまなサービスの提供が求められるという点だ。
シニア向け分譲マンションは、一般的に、おおむね自立して生活できる高齢者を対象にしている。
そのため、提供するサービスも健康維持が目的であったり、生活満足向上が目的であったりするものも多い。
分析結果から具体的に見ていこう。
平均価格は4386万円、徒歩15分圏内の供給も多い
まず、どのエリアに供給されているかと言うと、以前は「東海地方」(特に静岡県)など、
気候が温暖で過ごしやすい、あるいは自然豊かで温泉があるといった地域での供給が多かった。
近年になると、東京・神奈川・千葉や大阪・兵庫などの都市圏での供給が多くなっている。
出典/東京カンテイ プレスリリース「シニア向け分譲マンション供給動向」より転載
次に「最寄駅からの所要時間」を見ると、最多は「バス便」(30.6%)になる。
これは、自然が豊かな地域に立地している影響が大きいが、バス停まで3分以内などの物件も多いという。
一方、2番目に多いのが「徒歩5分以内」(24.5%)で、徒歩15分圏内の物件が全体の6割を占める。
このように、自立した高齢者が対象なので、徒歩で移動できる場所の物件が多いのが特徴だ。
出典/東京カンテイ プレスリリース「シニア向け分譲マンション供給分布」より抜粋し、筆者が作成
気になる価格はどうだろう?
2020年以降の供給物件で見ると、平均専有面積は60.08平米、平均価格は4386万円となっている。
関東地方に限定して見ると、平均専有面積は59.15平米、平均価格は4245万円なので、全国平均とさほど変わらない。
また過去の推移を見ると、バブル期に面積は広く(66.14平米)、価格は高く(5879万円)なったが、
2000年以降は、平均専有面積はおおよそ60平米、平均価格は3000万円台で落ち着いている。
ただし、平均坪単価は2000年代199.9万円、2010年代200.5万円、2020年以降240.4万円と、近年は上昇傾向にある。
シニア向け分譲マンションではどんなサービスを提供している?
さて、シニア向け分譲マンションには、どんな施設が設けられているのだろう?
同社では、2000年以降に竣工した73物件を対象に、「食事サービス」「娯楽サービス」「医療サービス」「介護サービス」の4つに区分して、それぞれの設備の付帯状況を調べている。
それぞれの区分で多いものを見ていこう。
■シニア向け分譲マンションにおける付帯施設の導入状況(対象:2000年以降竣工の73物件)
「食事サービス」
・レストラン・食堂 94.5%
「娯楽サービス」
・ホビールーム 60.3%
・娯楽室 57.5%
・AVルーム 46.6%
・カラオケルーム 45.2%
・温泉 28.8%
・体操室 19.2%
「医療サービス」
・医療提携 87.7%
・クリニック・診療所 24.7%
「介護サービス」
・訪問介護事業所 21.9%
・居宅介護支援事業所 19.2%
※出典/東京カンテイ プレスリリース「シニア向け分譲マンションの付帯施設&ランニングコスト」より抜粋
食事サービスを提供する「レストラン・食堂」の導入率は94.5%と極めて高い。
分譲マンションなのでキッチンが部屋にもあるはずだが、ここで提供される食事は栄養士などが考えた食事になっているので、家事負担の軽減だけでなく健康面でもメリットがあるだろう。
娯楽サービスでは、「ホビールーム」や「娯楽室」「AVルーム」「カラオケルーム」の導入率が特に高い。
以前は、趣味ごとに部屋が設置される事例が多かったが、広い部屋を多目的に使えるように変わってきているという。AVルームやカラオケルームは、一般の大規模マンションでも多く設置される共用施設なので、利用者が多いということだろう。
また、医療サービスでは、「医療提携」の導入率が極めて高い。自立した生活を送れると言っても、病気やけがの心配もあって、医療サービスは頻繁に受けたいということだろう。半面、介護サービスは医療サービスに比べると導入率は高くはない。
こうしてマンション内に施設が多く設けられたり、いろいろなサービスを提供したりするので、
管理費や修繕積立金は、一般の分譲マンションより高額になる。
各種サービスによる便利さが高まれば、それに伴ってランニングコストも増えるということだ。
こうした施設を活用して住人同士の交流を深めたいという、アクティブなシニアに向いていると言えるだろう。
高齢期に住む拠点はさまざまにある
高齢者の住まいとしては、ほかにも「有料老人ホーム」や「サービス付き高齢者向け住宅」などがある。
まず、有料老人ホームは、食事提供や家事支援、健康管理、介護サービスなどのいずれかが提供される介護施設で、利用料を支払う形になる。
「介護付」「住宅型」などのタイプがあり、介護付きではホームが介護サービスを提供するが、
住宅型では外部の介護サービスを利用する形になる。
次に、サービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)は、高齢者が安心して住めるような建物で、
安否確認や生活相談といったサービスが受けられるが、毎月賃料を支払う(長期間の賃料を前払いする場合もある)
賃貸住宅である。「一般型」と「介護型」があり、一般型は主に介護度が軽い人が対象だが、
介護度が重い人にも対応できるようにしたのが「介護型」だ。国の支援もあって、
サ高住の供給数が増えているのも特徴のひとつだ。
住宅型の老人ホームや一般型のサ高住の中には、シニア向け分譲マンションに近いものもあるが、
契約形態や費用面などに違いがあるので、違いをきちんと理解しておきたい。
さて、自宅を高齢期に向けてリフォームして住み続けることも含めて、
高齢期を過ごす拠点にはさまざまある。立地、居室の状況、提供されるサービスの有無、
介護サービスの受け方などがそれぞれ異なるので、どのように暮らしたいか、
どういったマネープランを立てるかなどをよく考えて選んでほしい。
https://suumo.jp/journal/2022/08/17/189203/https://suumo.jp/journal/2022/08/17/189203/