★「沖縄初の王様のお墓って、あるの?」~琉球初の王統のお墓・伝説編!

この原稿を書いているのは5月15日。49回目となる沖縄の本土復帰の日です。

こうした節目の日は、沖縄の歴史を振り返ることが多いのですが、今回は思いきり時間をさかのぼり、沖縄初の王統とされる舜天王統と、そのお墓について見てみたいと思います。

舜天王統のお墓があるナスの御嶽。正面はかなり立派なコンクリートの建造物となっています。

目次

琉球初代国王・舜天の父は源為朝という説

神話の王統から伝説の王統へ

舜天と息子、孫の3代にわたった

お墓は実在する

平和的な王位継承で英祖王統へ

まとめ

琉球初代国王・舜天の父は源為朝という説

沖縄の歴史をひもといてみると、琉球における最初の国王は浦添按司だった舜天(1166-1237年)とされています。

琉球の正史を記述した中山世鑑によると、舜天の父親は源為朝(みなもとのためとも)だそうです。為朝は平安時代末期の武将で、鎌倉幕府を開いた源頼朝や、その弟である源義経の叔父にあたる人です。

戦い敗れて島流しにされた為朝は伊豆大島を経て沖縄に流れ着き、地元の女性との間に舜天をもうけたとされます。

その後、望郷の念に駆られた為朝は故郷へ戻ることになりますが、船に女性を乗せることができないため、舜天母子は同行できませんでした。

浦添の小さな港で父の出航を見送った舜天は、父親が必ず帰って来ると信じ、近くの洞窟で母親と身を寄せ合いながら待ち続けたといいます。その話からここは、待つ港→マチナト→牧港という地名になったとされます。

舜天母子が為朝の帰りを待ち続けたという洞窟は、牧港テラブのガマという名称で現存し、拝所にもなっています。

神話の王統から伝説の王統へ

実は舜天王統の前に、天孫という王統があったという神話が伝わっています。天孫氏は1万7802年間にわたって琉球を統治しましたが、最後の25代目のときに利勇という臣下に殺されてしまいます。

舜天は、この利勇を討って初代琉球国王となり、舜天王統を開きました。この王統は1187年から1259年まで3代73年にわたって琉球国を支配したとされます。

舜天の在位は1237年に死去するまでとされますから、在位期間は約50年だったことになります。舜天が生まれたのは1166年といわれますから、70歳を越えるという、当時としては長命だったことになります。

在位中、舜天は新しい法律を制定したり、中国の暦を導入するなどして、浦添城を本拠に琉球を統治しました。

ただ、天孫王統は神話の中の存在と書きましたが、舜天王統についても、専門家の間では実在するかどうか疑問だとする見解もあります。もしかすると伝説の王統なのかも知れません。

舜天と息子、孫の3代にわたった

舜天が死去したあとは、息子の舜馬順煕(しゅんばじゅんき)が2代目の王として即位し、1248年まで約10年間在位します。

舜馬順煕が死去すると、さらにその息子の義本が即位。しかし、義本王の時代に琉球は飢饉や疫病に見舞われます。それを自身の責任ととらえた義本は王位を英祖に譲って退位しました。これによって舜天王統は滅亡することになります。

お墓は実在する

ところで、舜天王統が実在したか伝説だったかに関わらず、お墓は現存します。場所は北中城村仲順にあるナスの御嶽と呼ばれる場所で、ここに舜天と舜馬順煕、さらに義本も葬られているといわれています。

舜天王統のお墓はナスの御嶽の奥にあり、右側には「舜天王之墓・舜馬順煕王之墓」と刻まれた石碑があります。

一方、ナスの御嶽の北西150mほどのところには王妃の墓(うなじゃらうはか)があります。ここには義本のお妃が葬られているとされますが、北中城村史にはこちらに義本自身も葬られているという記述が見られます。

なお、南城市大里にある食栄森(いいむい)御嶽にも舜天が葬られているという話があります。さらに、義本のお墓に関しては、ほかにも国頭村や鹿児島県の奄美群島に合計10ヵ所ほどあるといわれています。

平和的な王位継承で英祖王統へ

舜天や義本がどこに葬られているかはともかくとして、複数のお墓が存在するというのは、800年も昔に存在したかも知れない伝説の王統らしいといっていいでしょう。

義本が英祖に王位を譲ったことで、舜天王統にはピリオドが打たれるのですが、かわりに新しく英祖王統が興ることになります。この王統にゆかりのある遺跡が浦添市にはいくつかあって、それについては次回紹介しようと思います。

まとめ

琉球における最初の国王は舜天だとされ、その父親は源頼朝らの叔父である源為朝といわれています。

舜天王統は1187年から1259年まで3代にわたって続きましたが、3代義本王の時代に飢饉や疫病で人民が苦しんだため、義本はそれを自らの不徳の致すところだとして、王位を英祖に譲ります。

舜天王統の三王のお墓が各地にあります。そのひとつが北中城村仲順のナスの御嶽。近くには義本のお妃のお墓があり、義本はそちらに葬られているという説もあります。

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