沖縄伝説・風習シリーズ「今さら聞けない、ウチカビってなに?」~燃やして送る、あの世のお金の話~

年が明けるとジュウルクニチ、3月に入ると春のお彼岸、4月はシーミー(清明祭)と、上半期は、お墓参りのイベントがいろいろあります。もちろん、これらすべてを行うことはまずなく、どれかひとつというのが普通ですが。

その際、ウチカビを燃やすことがあります。ウチカビがあの世のお金であることはウチナーンチュの間ではよく知られていますが、県外の人が見ると不思議そうな顔をして「これなぁに」と聞かれることがあります。

その質問にちゃんと答えたいと思うので、ウチカビについて、あらためて調べてみました。

★沖縄の伝説・風習シリーズについてのご理解ご協力へのお願いをコラムの最後に書かせて頂いていますので読んで頂ければ幸いです。

※ふう しゅう 【風習】

その地域社会で、人々が長年に渡って伝えててきた生活や行事の独特のならわし。

硬貨の柄が打ちつけられた紙

近年は沖縄の若者でもウチカビを知らない、見たこともないという人もいるようです。「ウチカビって知ってる?」と聞くと、「おうちにできるカビですか」などと、かみ合わない会話になったりします。

「あの世のお金だよ」というと「へぇ~」と理解不能な顔をされることもあります。実物を見せると「これがお金? トイレットペーパーより安っぽいね」などとバチ当たりなことをいわれることもあります。

ウチカビは、ペラペラの紙幣で、手ざわりはザラザラ。妙に黄色っぽい色をしています。たしかに、お金というにはあまりに安っぽいですが、考えてみれば燃やすためのものだからそれでいいのでしょう。

ただ、表面にはちゃんと硬貨の柄が打ちつけられていて、だから「打ち紙」なのかもしれません。ただし、硬貨のウチカビというものは見たことがありません。

中国から入ってきた習慣

ウチカビは「紙銭(カビジン)」ともいいます。中国や台湾にもあり、起源は中国だとされています。冥銭とも呼ばれますが、まさに冥土の銭というわけです。

中国では、昔からウチカビに類するあの世のお金を焼く風習があったそうです。それを14世紀末から約300年に渡って福建省などから移住してきた久米三十六姓と呼ばれる人たちが、沖縄に持ち込んだものという説があります。

沖縄で一般化したのは明治に入ってから

600年も前に入ってきたというわりに、沖縄で一般的に使われるようになったのは、実は明治に入ってから。せいぜい150年前からにすぎません。それは、琉球王国時代にはウチカビを燃やす習慣を士族階級のみが有していたからだと思われます。

今はお店で売っていますが、昔は紙を買ってきて硬貨を当て、上からゴンゴン叩いて模様を打ち出して作っていたといいます。その仕事は、主に子どもたちの担当だったようです。あの世のお金を子どもたちが一生懸命作る姿を思い浮かべると、沖縄らしいなぁと思います。

日本では三途の川の渡し賃という考え方がある

なぜウチカビを燃やすのでしょうか。もちろん、あの世でお金に困らないようにするためですが、もう少しくわしくいうと、この世で貨幣経済が発達したことにともない、死んだ後に行く世界でもお金が必要になるとの考え方に基づくものです。

これは前述のように中国を起源とする思想ですが、日本にも同じような考え方があって、棺にお金やお金を模したものを入れることがありました。ただ、日本の場合は、あの世ではお金は要らないが、三途の川を渡るときに渡し賃が必要ということで、入れたようです。

また、ヨーロッパでも亡くなった人の顔や体の上に硬貨を置き、天国への旅費にしたともいいます。

中国や台湾ではたくさん燃やす

とはいえ、火葬の時に棺に本物の硬貨を入れたり、法事やお墓参りで一万円札を燃やしたりするとお金を毀損するということで罪に問われたりしかねません。したがって、お金を模した紙を燃やすのは合理的です。

安いものなので、たくさん燃やしてもそれほどフトコロは痛みません。ちなみに孫悟空の西遊記では、紙銭をたくさん燃やした老人があの世で大金持ちになったという記述もあります。バンバン燃やした方が良さそうですね。

台湾には、お寺の境内に工場のような煙突を立て、その根元の炉で大量の紙銭を焼いている光景が見られるといいます。

また沖縄では、故人の法事で燃やすウチカビはあの世で役所に納める税金になり、年中行事燃やすものはお小遣いになるとされています。

福沢諭吉やアメリカドル柄も

近年は伝統的な硬貨の柄を打ったウチカビ以外に、一万円札を真似た福沢諭吉柄も出ています。また、中国や台湾などでも自国の紙幣のデザインを真似た紙銭、さらにはアメリカドルとそっくりのタイプもあるそうです。

なんだかユーモラスでもありますが、根底にはご先祖様を思う心があります。したがって、どんなデザインであろうとも亡くなった人があの世で豊かに暮らせるよう、心を込めて燃やしたいものです。

まとめ

中国を発祥とするウチカビを燃やす習慣は、故人があの世でお金に困らないようにするためです。日本での冥銭は三途の川の渡し賃としての役割が強いようです。

ご先祖様を思う心の現れなので、形骸化させずに次の世代に伝えていきたい習慣ですね

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※毎回書かせて頂いている「沖縄の風習シリーズ」は

みくにの会社も6年目に入り、毎日地道に稚拙なブログを書かせて頂いています。

このグログを読んだ読者様からの御質問等から沖縄に昔からある伝説・風習等を調査してその意味等を書かせて頂いています。

その為にその地域独特の「伝説・慣習・習慣」には、現在の社会情勢・常識から乖離した習慣もあります。著者としてその習慣について擁護・批判する立場には加担する目的はありません。 予めご理解・ご協力の程宜しくお願います。

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