「土葬用の墓地建設が物議をかもしている?」~ムスリムのお墓を受け入れられるかという話~

2020年9月、NHKでムスリム(イスラム教徒)用の墓地に関する報道がありました。

大分県でムスリム用の墓地を建設するにあたって、住民との間にあつれきが生じており、住民側が町や町議会に反対の陳情書を提出したというのです。

なぜこうした問題が起きるのかというと、ムスリムは遺体を土葬するからです。

火葬が99.97%を占めるという現代日本で、時代に逆行するような土葬が行われることに、住民が違和感を持ったことは理解できます。

さらにこの問題、いずれ沖縄にも飛び火する可能性があります。そこで今回は、ムスリムの墓地問題について考えてみます。

キリスト教では火葬容認が広がっている

ユダヤ教、キリスト教、イスラム教、この3つは兄弟宗教ともいわれます。キリスト教もイスラム教も源流はユダヤ教にあり、共通点が多いからです。

そのひとつが葬送法。つまり、いずれの宗教でも人が死んだら土葬することになっているのです。したがって、現在でも世界でもっとも多い葬送法は土葬です。日本でも昔は土葬が一般的でした。

ただ、衛生上の問題や都市化の影響で火葬が普及してきたのは日本の例を見ても明らかです。キリスト教でもプロテスタントでは1898年に火葬が許可され、カトリックも1963年にローマ法王が火葬を容認する姿勢を示したこともあり、現在では火葬許容派が増えています。

コーランに書いてあるから絶対土葬

ところがイスラム教では今も土葬です。なぜそうなのかというと理由は簡単。コーランにそう書いてあるからです。ムスリムの心的・物的あらゆる面を規定する聖典がコーランですから、それにしたがって土葬するのは当然です。

さらに、彼らは外国においても土葬にこだわるようです。日本には20万~30万人のムスリムが住んでいるそうですが、亡くなったら日本で土葬されて、安らかに眠りたいと望むのは自然なことといえます。

法律で土葬が禁止されているわけではない

ところで、日本には土葬を禁じる法律がありません。しかし、条例で禁止している自治体があります。たとえば、東京都は一部を除いて土葬が禁じられています。

条例で禁止されていない自治体であれば、土葬用の墓地建設は可能ということになります。実際、2019年9月の時点で、国内には7ヵ所のムスリム用墓地があります。

しかし、国内に居住するムスリムは増える傾向にある一方、墓地はまったく足りない状況です。しかも、7ヵ所のうち和歌山県にある1ヵ所を除いた6ヵ所はすべて東日本にあります。

そもそもイスラム教では人が亡くなったらなるべく早く、実際には24時間以内に埋葬することになっています。にもかかわらず墓地が東日本に偏在していれば、西日本で亡くなってから1日以内に埋葬するのは困難です。宗教上の規定以外に、搬送に時間がかかって腐敗が進む問題もあります。

こうした状況の中、九州の大分でムスリム用墓地の建設計画が持ち上がったのは、自然の流れといえます。

環境問題をタテに住民が異議

しかし、建設用地周辺の住民は、この計画に反対の意思を示しました。その理由は「墓地から流れ出る排水が飲み水などに混じるのではないか」というものでした。

簡単にいえば、環境に対する悪影響を懸念して反対するということです。しかし、それだけでしょうか。

中東ではムスリムによるテロや戦争が頻発しており、それはヨーロッパやアメリカなどにも波及しています。それもあって、ムスリムに対する潜在的な恐怖心もあるのではないでしょうか。

もちろん、土葬に対する違和感もあるでしょう。ホラー映画などに出てくるゾンビは、中途半端に腐った死体が生き返った存在ですが、土葬の習慣が背景にあるのはいうまでもありません。

ムスリム観光客の増える沖縄でもいずれ・・・

大分のムスリム墓地建設問題は、今のところ落とし所が見えていませんが、これを対岸の火事と見ているのはいかがなものかと思います。というのも、沖縄でも同様の問題が持ち上がる可能性がないとはいえないからです。

沖縄でもムスリムの観光客が増えています。この人々の国籍は中東ではなく、主にASEAN地域です。この国々でも経済発展が著しく、海外に旅行する人が増えているのです。

なかでも筆頭はインドネシア。この国は人口が約2億4000万で、そのうちの約9割、実に2億人超がムスリムです。

インドネシアやマレーシアなど、ムスリムの多い国からの観光客が増えれば、沖縄のよさが広く認知されるでしょうし、昨今の人材不足もあって移住してくる人も出てくるでしょう。すると、いずれは亡くなった人の墓地が必要になることも予想されます。

まとめ

火葬率99.97%の日本で、ムスリムの土葬用墓地建設の動きがあります。日本に居住するムスリムの数が増えているため、今後もお墓の需要が増えると予想されます。

しかし、ムスリムへの偏見や土葬に対する違和感から、住民が反対するケースも見られます。

今後、この問題が沖縄で起きる可能性もあります。持ち前のホスピタリティやイチャリバチョーデーの精神で受け入れるのか、あるいは締め出すのか、対応に注目したいところです。

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