沖縄の風習シリーズ「故人が好きな花ならなんでもいいの?」~墓参りに必須なお花のお話~

8月に入ると、そろそろお盆のことが気になってくる人も多いでしょう。沖縄の場合、旧盆ですから9月になることもありますが、お盆前の掃除を兼ねた墓参りをすることもありますので、早めに対応を考えなくてはなりません。

沖縄では、旧暦の7月7日のいわゆる七夕にお墓掃除をする風習があります。この際に必須なものといえばお花。もちろん、七夕に限らず、シーミーでもジュウルクニチーでもお花は墓参りにおいて大切なアイテムです。故人の好きなものならなんでもいいという話もありますが、いちおうルールやマナーというのもあります。

そこで今回は、おさらいの意味も込めて、墓参りの際のお花について考えてみたいと思います。

昔、供えられたのは花ではなかった

日本では、一般にお墓に供えるお花のことを仏花といいます。お花屋さんに行って仏花をくださいとお願いすればアレンジしてくれるので簡単ですが、故人や供える人の好みを反映する場合は自分で選ばなくてはなりません。

ちなみに、昔はお墓に樒(しきみ)という植物を供えました。小さなお花を咲かせますが、開花時期以外でも使われました。毒性を持ち、強い香りを放ちます。これが故人を守るとされたのです。

実際には、土葬や風葬が一般的だった時代に、樒の毒が遺体を動物から守り、強い香りが腐敗臭を打ち消すというきわめて現実的な機能があることから用いられました。

しかし、火葬が主体になったからでしょうか、樒が用いられることは少なくなりました。

長持ちするお花がいい

では、どんなお花がよいのか。まず、長持ちするというのがポイントです。たとえば沖縄でも供花として好まれる菊。菊は枯れても花びらが散乱したりしません。その他よく使われるのは、カーネーション、ユリ、デンファレ、グラジオラス、ケイトウなどです。

長持ちするという意味では、プリザーブドフラワーも使われるようになっています。そう考えると造花でもいいのかもしれません。

避けるべきお花もある

一方で使わない方がいいお花もあります。たとえばバラ。トゲのある花はタブーとされているためです。好きな人が多いので、故人も好きだったからといってバラの花束を持っていくのはやめた方が無難でしょう。ただし、どうしてもという場合は、あらかじめトゲを切り取って持っていくという手があります。

また、のある花も避けた方がよいとされます。たとえば彼岸花など。スズランや水仙などもNGと思っていた方がいいでしょう。さらに匂いのきつい花も避けるべとだといわれます。

ところで、ユリの花には毒があり、さらに強い香りもあります。なのでお墓に供えるには不適当なのですが、実際にはよく使われます。お花屋さんで仏花のアレンジを頼んでもユリを入れてくれるケースが多いので、例外的に許容されているといっていいでしょう。あの清楚な美しさが供花に向いているからかもしれません。

霊園では生花は持ち帰る

一方、近年は沖縄でも霊園内にお墓を持つケースが増えていますが、霊園内にあるお墓にお参りするときは気をつけるべきマナーがあります。そのひとつは、生花は持ち帰るということです。

花立にお花を生けっぱなしにして帰ってしまうと、枯れた後に風で散らばってしまうことがあります。また、お墓は自然環境のいいところに建てられることが多いので、虫が寄ってきたりするのも好ましくありません。

こうしたことから、霊園ではお墓の供花が枯れるタイミングで片づけてくれたりもするのですが、そうでないところもあります。

また、一週間おきなどといった比較的高い頻度でお墓を訪れることができればいいのですが、特に沖縄ではシーミー、ジュウルクニチー、七夕などといった決められた行事以外に、むやみに墓参りしてはいけないとされているので、そうひんぱんに行くとこもできません。

そのため、霊園によっては生花を持ち帰るようにと、ルールとして決めているところもあります。傷んだり枯れたりしたお花をそのまま放置しておくのは衛生的にも、またご先祖様への礼儀としてもあまりよくないのは当然といえるので、持ち帰るのがいいでしょう。

ちなみに持ち帰った生花を家の仏壇に供えるのはよくないとされます。まるで使い回しのように見えるので、ご先祖様に失礼だというわけです。テーブルや玄関先に生けたりという、自分たちの生活の中で使う分にはまったく問題はありません。

まとめ

ご先祖様を供養するのにお花は欠かせません。トゲ、毒、強い匂いなど、多少のタブーはありますが、故人の好きだったお花や、季節を彩るお花を供えるのはとてもよいことです。故人が明るい性格の方だったら、ひまわりを持って行ってもいいのです。大切なのはご先祖様を思う心と、ほんの少しの気づかいですね。

それから、霊園の場合には注意事項をよく聞いて、ルールやマナーに反しないことが大事です。

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