沖縄の人なら、ウサンデーという言葉を知っている人は多いでしょう。シーミーなどで墓参りに行ったとき、お供え物の料理を墓参者みんなで食べることです。
いただくのは重箱料理が基本ですが、食が多様化している昨今、そうとも限りません。重箱料理が作れる人がいなかったから、お墓にピザを配達してもらって墓前に供え、ウートートーした後みんなで食べた、などという話も聞きます。
昔、重箱料理はごちそうと呼ばれましたが、現代の若者や子どもたちにとってはピザの方がごちそうなのかもしれませんね。
さて、このウサンデーですが、キリスト教にも似たような儀式があるようですが、ウサンデーでは意味が少し異なります。それを踏まえて対比してみるとなかなかおもしろそうです。
そこで今回はウサンデーについてちょっと深堀りしてみます。
重箱料理は天・地・海の食材
まず、重箱料理ですが、沖縄ではウサンミと呼ばれます。漢字では御三味と書き、「天・地・海」の3ジャンルの食材を使った料理ということになります。これは中国から伝わってきた考え方です。
具体的な内容は三枚肉、かまぼこ、天ぷら、揚げ豆腐、昆布、こんにゃく、ゴボウなどで、これにおもち専用の重箱が付きます。
正式には、これを2セット用意します。つまり重箱が4つ。1セットはご先祖様が食べるもので、もう1セットは生きている家族がいただくものというわけです。
ウサンミは単なるクヮッチーというより、長い歴史で育まれた食文化のひとつといっていいでしょう。
ウサンデーは「おさがり物」が語源
さて、ウサンデーですが、この言葉は「おさがり物」が語源のようです。「ウサンデーサビラ」と、ご先祖様にいいながらお供え物を下げ、みんなでいただきます。ご先祖様に感謝の気持ちを捧げながら食べることでご加護が得られるとされます。
ちなみに、沖縄出身の3人の俳優で構成する「USUNDAY(ウサンデー)」という演劇ユニットがあり、彼らは2019年にタイで開催された舞台芸術フェスティバルで賞を受賞したそうです。
ウサンデーが世界を舞台に活躍するというのは、ウチナーンチュとしてはワクワクしますね。
キリスト教にも同じような儀式がありますが、(実際は意味は全く異なります。)
ある方、キリスト教の世界にはウサンデーに近い儀式がありますよね?
ご質問がありましたが、正式には、少し意味が異なります。
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それは聖餐式というもので、礼拝の後に行われる儀礼的な会食のことをいいます。
聖餐式の起源は、キリストがはりつけにされる前夜に行った会食にあるとされます。レオナルド・ダ・ヴィンチが1495年から1498年にかけて制作した「最後の晩餐」は、このときの情景を描いたものとされています。
最後の晩餐の様子は聖書には次のように記述されています。
「彼らが食事をしているとき、イエスはパンを取り、祝福した後、弟子たちに与えて言われた、「取って食べなさい、これはわたしのからだである」。
また杯を取り、感謝して彼らに与えて言われた、「この杯から飲みなさい。これは、罪のゆるしを得させるようにと、多くの人のために流すわたしの契約の血である」。(マタイによる福音書26章26~28節)
死を間近にしたイエスは、パンとぶどう酒を象徴にして、自らの体を弟子たちに与えたのですね。
ちなみに聖餐式という言葉はプロテスタントで使われるもので、カトリックの教会で行われる聖餐の儀式は「聖体祭儀」や「聖体の秘跡」と呼ばれます。
※今回のコラムでは、文字数の関係でキリスト教の聖餐式については詳細は深く触れませんでしたが、今度タイミングをみて書かせて頂きます。
お盆とシーミーをいっしょにしたような「死者の日」
さて、キリスト教に「死者の日」があることをご存じでしょうか。すべての死者に祈りを捧げる日で、カトリックでは11月2日と決まっています。
宗教改革などで廃止になった国もありますが、一部で今も大切な宗教行事として盛大に行う国もあります。代表格がメキシコです。
メキシコにおける死者の日の行事は、ほぼお祝いといってもいいものです。この日は親族など、みんなで食べ物や飲み物を持って共同墓地に行き、まずお墓の掃除をします。そしてお花、一般的にはマリーゴールドを手向け、お供え物をします。
お祈りを捧げた後、バンドが音楽を奏でたりして陽気に騒ぐ中、お酒も飲んだりしながらみんなでパーティーを楽しみます。沖縄のシーミーをさらに派手にしたようなものです。お祝いなのですから、当然といえば当然ですね。
ピザの配達が来るかどうかまではわかりませんが、近くには出店や屋台が出たり、食べ物や飲み物の売り子がやってきたりで、ほとんどお祭りです。
もちろん家から持ってきたり、近くで買ったりした料理をお墓で食べます。宗教行事のわりには聖餐式のような厳粛なものではなく、やはり沖縄のウサンデーに近い明るいものだといえます。ラテンの血とうちなーマインドの共通点なのでしょうか。
まとめ
聖餐式やメキシコにおける死者の日のお祭り。これらとは宗教的な背景は違いますが、食べることを大切な儀式としている点ではウサンデーも似た部分があるようです。
いずれも、食べ物によってご先祖様やキリストとつながる、神聖な行為なのですね。