「火葬は決して一般的ではない?」~世界では土葬が普通という葬送法のお話~

日本では、人が亡くなると火葬し、遺骨をお墓に入れます。それが当然だと日本人のほとんどが思っていて、疑問を感じる人はあまりいないでしょう。現代のお墓はお骨を入れることを前提にできていて、さらにその前提として火葬というものがあるのです。

しかし、日本の火葬の習慣は、世界的に見ると実は大変少数派です。外国人に聞いてみると次のような反応が返ってくるかもしれません。「火葬?パパやママを燃やすの。そんな残酷な」「骨だけ残してみんながお箸で拾うって?オカルトチックな儀式だね」

このように亡くなった人の葬送法で見ると、日本の常識は世界の常識ではありません。では、世界的にはどのような葬送法が主流なのか、調べてみました。

世界の主流は土葬

結論からいうと世界的には土葬が主流です。キリスト教もイスラム教もユダヤ教も死者の復活を信じているので、遺体を燃やすなど論外、というのがごくふつうの考え方です。

これは十字架にはりつけにされ、処刑されたイエス・キリストが3日後に復活したという話が、重要な宗教的基盤になっているためです。死者が復活するなら、その時に元の肉体がなければ困ります。そのためキリスト教の国、特にカトリックは伝統的に火葬を避けてきました。例外的に火葬が多いのは、イギリスとチェコぐらいです。

一般的に、保守的で信仰心が厚く、伝統を大切にする国では土葬が多く、合理主義が浸透していて宗教的な縛りが弱い国では火葬が増えつつあります。

つまり、おおざっぱには、葬送法は宗教や社会状況、またはそのバランスによって決まっているといっていいでしょう。この場合の社会状況とは、土葬用のお墓をたくさん作れる土地があるか、環境や衛生問題についての意識が高いか、さらに土葬と火葬どちらのコストが安いか、などをいいます。

したがって、宗教の影響力が強いカトリックやイスラム教の国々では土葬が多く、それほど強くないプロテスタントの国などでは社会状況を優先して火葬が多くなる傾向があります。一方、ヒンズー教では社会状況はあまり関係なく、通常死者は火葬に付されます。また、ヒンズー教と関係の深い仏教でも基本は火葬です。

日本には火葬を受け入れやすい土壌があった

日本ではどうかというと、無宗教の人が多いので宗教的な縛りがほとんどなく、社会状況を優先して火葬が増えてきた、というのが実情です。現在の日本の火葬率は約99%に達しており、都市部での火葬率は事実上100%といえます。

火葬の習慣は、仏教とともに日本に入ってきたといわれています。これは釈迦が火葬されたことにならったものです。ちなみに火葬にすることを、荼毘(だび)に付すともいいますが、荼毘はもともと古代インド語で火葬を表す言葉です。

記録が残っているもので、日本で最初に火葬が行われたのは西暦700年で、道昭という名の僧侶だったといわれます。また3年後の703年には女帝の持統天皇が火葬されたとされます。

江戸時代になると、江戸、京、大坂などの都市部では、一般庶民の間でも一部火葬が行われていました。ただ、当時は今のような火葬炉ではなく、野天の火葬場で地面に穴を掘り、そこに薪を積み重ね、その上に棺を置き、さらに薪を積んだそうです。いわば、薪で棺をサンドイッチにし、火で包みこむように焼いたようで、しかもすべての骨を拾うのではなく、地域によっては、のど仏だけを収骨する習慣がありました。

日本でも伝統的には土葬が主流

とはいうもの、第二次世界大戦までは日本でも土葬が主流でした。昔の火葬では大量の薪はもちろん、それなりの技術も必要で、お金のかかる葬送法だったと思われます。庶民にとってはある意味、高嶺の花だったのでしょう。

したがって、現在は火葬が100%近いにもかかわらず、日本人の本来の葬送法は土葬だったといえます。棺に納めて土の中に埋めるという、いわゆる埋葬です。したがって、火葬して骨揚げをしてお墓に納めるという現代の葬送法も、実は新しいものでもあり、決して伝統的な葬送法ではありません。

火葬、土葬以外にも世界にはさまざまな葬送法が

もちろん、世界には土葬や火葬以外にも、さまざまな葬送法があります。風葬、水葬、鳥葬、樹上葬などです。世界の葬送法を見ると、その多彩さはすなわち文化の多彩さの表れであることがよくわかります。それはもう、ぱりぱりと目からウロコが落ちるほどです。

こういってはなんですが、多彩な葬送法は知的好奇心を刺激します。非常に興味深いテーマなのです。といっても単なる興味本位ではありません。送られ方を考えることは、死に方を考えることであり、それは生き方を考えることにつながるからです。

まとめ

以前「おくりびと」という映画が社会的に大きな反響を呼びましたが、この作品が証明したように、亡くなった人の葬送法は非常に現代的なテーマです。

また、日本だけでなく、世界ではどのように死者を悼み、尊厳を守り、敬意を払い、葬送しているのか。これもたいへん興味深いことといっていいでしょう。

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