以前のコラムで、お墓用の石材が世界各地から輸入されていることを紹介しました。国産の石材ももちろん使われていますが、現在は中国産を中心とした外国産が中心になっています。
家を造るとき、特に木造の場合は「秋田の杉」とか「台湾のヒノキ」とか、素材にいろいろこだわる人がいます。何十年も住む家ですから当然でしょう。
では、お墓の素材に無頓着というのはいかがでしょうか。場合によっては何百年も子々孫々の終の棲家(ついのすみか)となる可能性が高いのですから、やはりちゃんと考えておきたいものです。
そこで、墓石の素材となる石の種類についてチェックしておきましょう。
基本形は4タイプ
墓石に使われる石材は、国産・外国産全体で見ると約300種類もあります。これはほぼ次の4つのタイプに分けることができます。
- 花崗岩(かこうがん)
- 安山岩(あんざんがん)
- 斑レイ岩(はんれいがん)
- 閃緑岩(せんりょくがん)
これらは、材質はもちろん色や耐久性、吸水率などがちがいます。また価格も千差万別です。それぞれの特徴を見てみましょう。
花崗岩(かこうがん)
いわゆる御影石(みかげいし)と呼ばれるのがこれで、墓石としては最も広く使われているタイプです。白御影、黒御影、赤御影などと呼ばれるのも、岩石の種類としては花崗岩となります。ちなみに御影石というのは日本だけで通用する名称で、英語では花崗岩、御影石いずれも「granite=グラナイト」といいます。
現在の神戸市東灘区に御影という地域があり、ここで100年ほど前に本御影石が採掘されており、それにちなんで名称として定着しました。花崗岩=御影石と勘違いされるほどブランドとして有名になっているわけです。
花崗岩は、マグマが地下の深いところで冷えて固まってできた石です。非常に密度が高くて硬いため劣化しにくく、吸水性が低いのも特徴。また、磨き上げることできわめて美しくなることも人気の理由です。
安山岩(あんざんがん)
花崗岩とは逆に、火山噴火の際などに地表に噴出したマグマが短い時間で冷えてできた石です。岩石の分類では火成岩と呼ばれる種類になります。墓石としては花崗岩に続いて広く使われている石材です。
非常に硬くて耐久性や耐火性に優れるため建築用材や外壁、庭石など、私たちにとって身近なところで使われています。そうした特性は墓石としても有用なので、よく使われているというわけです。
安山岩の代表的なブランドとして本小松石という石材があります。神奈川県の真鶴町で産出し、もっとも高級な安山岩とされます。天皇家のお墓にも使われているほどなので、日本を代表する墓石のひとつといっても過言ではありません。
また、山梨県甲府市で産出する本山崎石も安山岩の高級品として知られます。磨くと淡い灰色を呈し、風化に強いためその色合いが長く続くことが特徴ですが、産出量が少なく貴重なため高価な石材です。
斑レイ岩(はんれいがん)
岩石の分類としては玄武岩と呼ばれる石です。ちなみに玄武岩は富士山のような火山でも生成されるといわれます。
磨き上げると光沢のある深い黒色を呈するため、黒御影と呼ばれることがあります。花崗岩にも同様の名称がありますが、もちろん材質が違います。また、風化に強く、長い間直射日光や風雨にさらされても風合いが変化しにくいといわれます。したがって石そのものの寿命は半永久的といっていいでしょう。
国産斑レイ岩の代表的なブランドとして、いずれも福島県で産出する中山石および浮金石があります。
閃緑岩(せんりょくがん)
含まれる物質からすると安山岩に近い石です。ただし、安山岩が地表付近でマグマが急速に冷却されて固まった石であるのに対し、閃緑岩は地下の深いところで時間をかけて冷えてできるという違いがあります。
生成過程においては花崗岩に近い面もありますが、花崗岩よりも濃い黒色を呈するのが特色です。そのため、こちらも黒御影と称されることがあります。
黒色は斑レイ岩ほど濃くはありませんが、磨き上げると深い光沢が出て、しかも風化しにくいため、墓石として非常に貴重です。特に国内では産出量が少ないため、閃緑岩をお墓に使うときは中国産を輸入するのが一般的となっています。
まとめ
膨大な種類のある墓石なので、購入する場合には見かけや業者のセールストークだけで判断せず、いくつかの項目をチェックすることが大切です。自分でできなくても業者に質問するだけで「この客はわかっているな」と思ってもらえるメリットもあります。少なくとも次の3つはおさえておきましょう。
【吸水率】
この数値が低い石材は水はけがよく、劣化しにくいという特徴があります。逆に吸水性の高い石材は耐久性が低く、水がシミのように浮き出てしまうという難点があります。
【圧縮強度】
圧縮に対してどのくらい耐えられるかを示します。この数値が高いほど壊れにくく、寿命が長いといえます。
【見かけ比重】
簡単にいえば石の重さを表します。一般に墓石は重い方が長持ちするとされているので、100年先のことまで考えると、この数値も要チェックです。