シーミーの季節に考える、お墓の役割とお墓参りの意義

沖縄の4月は古くから「うりずん」と呼ばれる季節で、うっとうしい梅雨も猛暑の夏もまだ先の過ごしやすい時期となります。同時にシーミー(清明祭)のシーズンとなり、特に土日・祝日は各地でお墓参りをする人々の姿がよく見られます。

なかには大きなお墓の前に家族や門中のメンバーが揃い、料理を広げてお酒を酌み交わしたりして、さながら宴会のような光景も見られます。まるで、ご先祖様と生きている人たちが楽しく交流しているようにも見受けられます。

そこには、お墓は怖いところ、忌み嫌うべき場所などといった雰囲気は少しも感じられず、逆に「お墓っていいところだなぁ」と思うことすらあって、お墓の役割やお墓参りの意義などについてあらためて考えさせられることもあります。今回はそれらの点について整理してみましょう。

お墓の種類

一口にお墓といっても、いくつの種類があります。まず、そこをおさえておきましょう。

一般墓

これは、私たちが普通にお墓と認識しているタイプで、コンクリートや石で造られています。通常は家族や門中など、広い範囲での「家」単位で使われます。したがって、人が亡くなるたびに造られるものではなく、原則として子々孫々使われていきます。

納骨堂

寺院や霊園などに設置されることが多い施設で、多数の納骨スペースが用意されているのが特徴です。なかにはコインロッカーのようなタイプもあるほど、小さなスペースですが、それを借りて納骨するので非常に安価です。現代は、特に都市部ではお墓用の土地が不足して確保しづらく、確保できたとしても値段が高いのが実情です。そうした状況を背景に、納骨堂のニーズが高まりつつあります。

他にも、家や血縁関係に関係なく一か所に多くの遺骨を納める合祀墓など、いくつものお墓のタイプがあります。

永代供養

お墓のタイプとは意味合いが異なるのですが、永代供養という一種のサービスがあります。これは、一般墓や納骨堂などに入った遺骨を、縁者に代わって寺院や霊園が供養してくれるというもの。お墓の継承者がいなかったり、いなくなることが予想される場合には安心できるシステムですが、お墓参りに訪れる人がいなくなることもあるため少し寂しい気もします。

お墓の社会的な役割

このように、タイプはいくつかありますが、端的にいえば、お墓とは遺骨を納めておく場所です。

人が亡くなって火葬すれば遺骨が残ります。これは一般的なモノとして扱って処分することはできません。どこかに納めなくてはならないのです。もちろんペットの骨とも違うので、適当な場所に埋めたりするわけにもいきません。

近年では遺骨を海にまく散骨という方法も行われているようですが、散骨をしない限り、遺骨を納めておく場所が必要です。

さらに、亡くなった人に対しては供養も行います。供養を行う場所としてのお墓がなければ不都合が生じるのはいうまでもありません。

一方、お墓を建てず、自宅などで遺骨を保管しながら供養を行う「手元供養」もありますが、供養する人もいずれ亡くなることを考えると、いつかはお墓が必要になります。

お墓の精神的な役割

こうした社会的なあるいは機能的な役割以外に、お墓には精神的な役割があります。その第一は亡くなった人と生きている人をつなぐこと。特に沖縄では先祖崇拝が文化の基盤にもなっていますから、先祖と生きている家族とのの役割も果たしています。

日常生活を無事に送れていることについて、ご先祖様に報告し、感謝を示すのは、ご先祖様との絆を再確認する場でありますし、シーミーは一族そろってそれができるという点で大変意味のある行事といえます。

お墓参りの意義

お墓参りの意義とは、役割と重複する部分もありますが、日ごろの幸せをご先祖様に感謝したり、入学や卒業、就職、結婚や出産、家の完成など、人生における重大なできごとを報告することなどでしょう。

また、特に沖縄のシーミーを見ると、生きている者同士の絆を強めるという意義もあるように思えます。

特に大きめのお墓だと、数十人も集えるスペースが墓前にあったりし、シーミーともなると一族郎党が集まってにぎやかな宴会になっている様子も見受けられます。普段はなかなか顔を合わす機会がなくても、このときばかりは一堂に会して笑顔で近況報告をしたりします。

つまり、お墓参りは生きている人同士の絆を再確認し、それを深めるという意義もあるのです。沖縄のシーミーは特にその傾向が強いように思えます。

まとめ

このように、お墓の役割やお墓参りの意義を考えていくと、故人の遺骨をていねいに納めて供養し、それを通じてご先祖様に感謝の気持ちを捧げ、さらに生きている者同士の絆も深めていくという、人間にとって大変大きな意味を持つのが、お墓だということがいえます。

特に沖縄のお墓は、この性格が強いこともわかります。

社会が発展するにつれて、さらなる経済性や効率性が求められるようになり、それにともなってコインロッカーのような納骨堂が増えたり、散骨する人が出てきたりしています。しかし一方で、お墓という実体が存在し、私たちの心を豊かにしてくれることはいつになっても変わりません。

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