沖縄の昔ながらのお墓は、本土に比べ敷地が広く設けられています。
お墓参り、清明祭には親戚一同が会し、そこでごちそうを囲みます。スペースがあらかじめ設けられているお墓がほとんどで、中には石材でできたベンチを設置しているお墓もあります。
さまざまな意味合いを持つお墓です。その墓地の定義、良い墓地、悪い墓地、法で見る墓地について今回はお伝えします。墓地選びの参考になれば幸いです。
墓地について
「墓地」というとどのようなイメージをお持ちでしょうか?
本来「墓地」というのは、霊園墓地や寺院墓地を総称して呼ばれる事が多く、定義としては墓地、埋葬に関わる法律の第2条5項で「お墓を建てるために、墓地として届けられていて各都道府県知事の許可のもと墓地として認められた区画」の事です。
例えばやみくもに気に入った土地に許可なくお墓を建てることはできません。お墓というのは遺骨を葬る場所です。埋葬に関する法律は大きく関わってきます。
ここでいわれている都道県知事の許可とは、お墓を建てたい申請を保健所に届け出てから最終的に得られるものです。
すぐに必要書類の提出をするのではなく、事前相談を得て申請です。最近では県知事ではなく、各市町村長の許可になっている自治体もあります。
しかし、墓地の設置許可は簡単におりるわけではありません。
墓地の設置許可の基準は上記にもある墓地、埋葬に関する法律(以下墓埋法)を元にした条例で定められています。
各自治体によって多少の違いがあるので許可申請を行う際には留意しておかなくてはなりません。以下で墓地の設置許可に必須である条件に付いて記載します。
運営、経営団体
墓地を運営、または経営する団体はほとんどの自治体で地方公共団体、公益法人、もしくは宗教法人に限られています。営利団体や個人が許可を得る事は難しいものです。
地方公共団体が運営する場合は公営、その他の法人が運営する場合は民営の墓地になります。後者の墓地の場合はさらに条件が付け加えられます。墓地というのは基本永久的に存続させなくてはいけません。
つまり、営利目的で墓地の販売を行っている場合、万が一経営が破綻してしまうと一番に困るのは利用者の方々です。
そのような事態を避けるべく、経営母体がしっかりとしていて尚且つ永続的な運営ができる団体や法人を選定する必要があります。
墓埋法
正確には「墓地、埋葬に関する法律」といい、昭和23年に制定されている法律です。
対象は墓地、納骨堂、火葬場などの管理、埋葬等が国民の宗教的感情に沿っており尚且つ公衆衛生や公共の福祉の支障になる事がないよう努める事が明確に定められています。
葬儀の方法や宗教ごとにどう執り行うか等は、憲法に定められた「宗教の自由」「思想、信条の自由」に抵触するので規定されていません。
この法律はあくまで人の屍体を対象に制定されている法律なので、最近増加しているペットのお墓や火葬、埋葬は墓埋法の範囲ではありません。
上記でも記述しているように火葬場、墓地、納骨堂の経営を行う場合にもこの法律が大きく関わってきます。
法律には一度許可を取得した後に周辺の環境や生態系、水質汚染などの欠陥が見つかった場合、改善命令や使用の制限、最悪の場合許可の取り消しもあり得るとあります。
火葬場以外での火葬や許可を受けた墓地以外でのお骨の埋蔵を禁止していて、ほかにも死後24時間以内の火葬の禁止、ただし妊娠6カ月以内の胎児や感染法に抵触する遺体は対象外で場合によってはすみやかに火葬される事がある等、埋葬や火葬に関する手続きなども規定されています。
この法律は、お墓を生業にしている方や葬儀会社の方でなければ、耳にする機会の少ない法律かもしれません。しかし、関わる機会もあるので勉強程度に頭に入れておいてくださいね。
良い墓地とは
永代に渡って守っていくお墓ですので、お墓の購入の際には慎重に慎重を重ねて決めていかなくてはいけません。
上記でも記述しているように墓地を設ける許可申請の際に、ある程度の条件をクリアしているはずなので最低限の立地ではあるかと思います。しかし、自分に合った墓地を探すことに妥協はしないでください。
例えば、生活圏外に墓地を購入しお墓を建てた場合、この先数十年たってもお墓を守り続け、継承していけるのか?自分で運転ができなくなった時、歩行が困難になった時にお墓参りは可能なのか?など少し考えを広げてみてください。
立地、周辺の環境に問題はないか、地盤の状態まで考慮しても良いでしょう。
自分のお墓の事ですので、妥協せずに好条件の墓地を探す努力をしましょう。自分自身で判断がつかない場合は、家族に相談したり、お墓業者のアドバイスを聞いてみるなど他者の意見も聞いてみてください。
安い買い物ではないので、しっかりと内容を頭に入れておきましょう。
立地条件
墓地の立地に関して条件を付けている自治体がほとんどです。
基本的には、墓地の周辺に民家、学校、病院等の公共施設がない場所に定められています。
立地上それらの施設が近隣にある場合は、その施設の同意を得ることが条件になっている自治体が多いです。
周辺の景観を損ねない事、環境に配慮する事や公衆衛生や飲料水に影響を及ぼさない事、河川や湖、海などから一定の距離を設ける事などここにも細かく規定に盛り込まれている事があります。
墓地内でもお墓どうしの間隔を一定距離とらなくてはいけない場合もあります。後にトラブルになる事を防止する為、ひいては永続的な墓地の運営ができるようにする為のものと言えます。
墓地の設備
お墓参りをする時に必要な設備、もしくはあったら便利なサービスは何ですか?
車社会の沖縄では、利用する側に必要なサービスとして駐車場があるのとないのとでは利便性の面が大きく変わります。
お供えしたお花やお供え物、それに伴って出てくるゴミなどの不要物が処分できる場所(ゴミ捨て場等)があるのかも重要です。
墓地周辺や墓石付近の排水が適切にされているかも良い墓地なのか判断基準の一つになります。排水が困難になれば、お墓に苔が発生したり衛生上問題があるので注意が必要です。
自治体によっては、許可を得るための条件が少し違ったりします。墓地と墓地の幅間隔を指定していたり、近隣住民への配慮を条件にしているところもあります。
配慮の内容としては、外から見た時に墓石が見えないように外側に植林、目隠し代わりにしたりと細かく指定されています。
改装と墓地の関係
改葬は、簡単に言えば「お墓の引っ越し」の事です。
改葬についてはお墓の改葬(引っ越し)にかかる費用や時間を知ろう、墓じまいやお墓の引越し(改葬・移転)が沖縄でも増えている?にあるので詳しくはそちらをご覧ください。
先日新聞にも掲載されていましたが、近年改葬が急増しています。
お墓の老朽化や遺骨の整理を兼ねて新しい土地へお墓を建ててお骨を移す方、利便性を考えお墓の引っ越しをする方など、理由はさまざまです。その背景には現代が抱える社会問題が見え隠れしている事があります。
良い条件の墓地を探す事から改葬はスタートします。
上記でも記しているようにご自身やご家族のライフスタイル、ライフサイクルに合った墓地を妥協せず探していくことが大切です。
墓地の分類
墓地は運営団体によって分類されています。以下でその種類についてお話しします。
地方公共団体による墓地
運営元は、各市町村などの地方公共団体で「公営墓地」と呼ばれています。
公営の為、倒産や破綻する心配がなく、特徴としてすべての住民に平等で公平です。宗教を問われる事、特定の石材、お墓業者を問われる事もありません。
定期的に清掃が行われていて、その他の整備が管理されているのでどの市町村でも人気があります。金額については各市町村の地価により算出、設定されています。
例えば都市部にある公営墓地は、応募対象である市民の数も多く、募集がかかればすぐに応募が殺到するので倍率も高いのが現状です。
公営の墓地ですので募集の情報の入手先が限定されており、期間や応募資格も限られています。さらに手続きに融通が利かず書類の準備を入念に行い不備がないよう気を配らなければなりません。
公営墓地は一般の墓地に比べ区画面積が広く、駐車場から自分の墓地まで少し距離があるので不便を感じてしまうかもしれません。
宗教法人による墓地
多くの場合は、寺院内に霊園として設けられていいます。大きな特徴は経営管理や運営管理を寺院が行います。
民営墓地や公営墓地と違って、信仰する宗教をお持ちの方は手厚い供養が受けられる点や悩み事があれば相談に乗ってもらえるなど気持ちの面でも安心できるでしょう。
留意点として、寺院内に墓地を設ける場合は基本的に檀家である事が条件になっています。その際に入壇料やお布施など必要になるほか、宗教の限定や石材店も指定される場合が多いです。
宗教法人による事業型墓地(民営墓地)
事業型墓地という言葉は聞きなれないかもしれません。よくテレビのコマーシャルで放映されている販売墓地のタイプと同じです。
沖縄ではまだまだ個人墓が主流ですが、近年は民営の霊園墓地が増えています。金額が明確である事、施設として必要なトイレや駐車場、洗い場を備え付けているところもあります。
近年では永代供養を行う霊園、納骨堂、慰霊碑が建てられているところもあります。利用者のニーズに対応したサービスも充実しています。墓石の型や宗教が限定されておらず、石材店の指定もない多様で柔軟な姿勢が現代に合っているからでしょう。
留意点として、競争他社が多く存在するので本当に自分に合っているかなど見積もりや見学を通して自分自身で判断しなくてはいけません。
事前に情報収集や予習をせずにいるとあとで後悔するかもしれません。
どの霊園も似たようなプランでどこも同じと思いがちですが、それは違います。各霊園ごとにセールスポイントや逆にデメリットも持っています。その為よく見て、よく考える事が大切なのです。
予算は無理のない適正な金額か?立地条件は自分の生活圏内、もしくは無理せず足を運べる距離か?など多くの判断材料をそろえて吟味しましょう。
まとめ
今回は墓地についてお話ししました。ここまで読んでみて初めの時と「墓地」の印象は変わったでしょうか?
墓地というのは、法で定められた場所で自分の所有する土地だからと言って安易に墓地にできないという事をご理解いただけたかと思います。
昔と違い現代人の生活スタイルや思考で墓地のスタイルも年々変化しています。墓地選びの参考になれば幸いです。
大切な人に安らかな永遠の眠りを祈る気持ちは、いつの時代でも変わりません。多様化が求められる現代では、霊園側も柔軟な考えを持たなくてはいけないのかもしれませんね。