近年改葬や墓じまいが増加傾向にあります。「お墓の引っ越し」で悩んでいる方も多いでしょう。
一般的にお墓の引っ越しの事を「改葬」と言いますが、住宅の引っ越しのように何度も繰り返すものではないので分からない事の方が多いもの。
その背景にはさまざまな理由があり、中には現代を生きる人々の抱える深刻な問題の影響も考えられます。
今回はそんなお墓の引っ越しの内容やかかる費用や時間などについてお話ししていきます。
目次
お墓の改葬(引っ越し)について
墓石は解体、お骨のみを新しいお墓に引っ越し
墓石に重大な損傷がある場合(大きなひび割れ、地盤の問題、コンクリート墓の場合は内部の鉄筋の劣化)に引っ越しを検討される方が多いです。
墓石の補修が難しく、新しい土地に新しくお墓を建てた方が利便性の面でも都合が良いとお考えの方もいます。
沖縄のお墓は昔から人々の生活する集落から少し離れた場所に建てる事が多く、生活環境が大きく変わった現代では少し不便を感じてしまう事が多々あるかもしれません。
こういった理由もあり「墓じまい、墓石の解体、お墓の引っ越し」をする方が増えています。
改葬には行政手続きのほかに閉眼供養、場所によっては墓地の返還や離壇の手続きも解体前に必要です。また、新たなお墓にお骨を収める際にも手続きのほか開眼供養が必要です。
一生にそう何度も行う事ではありませんので戸惑う事も多々あるでしょう。数少ないからこそ専門業者と相談し、手続きや作業の流れを把握しておくことが重要です。
墓石とお骨を新しい土地に引っ越し
天然石を使用したお墓の場合、およそ50年もつと言われています。対してコンクリート墓の耐久性は天然石に劣るので約20から30年と言われています。
もちろんあくまで目安のお話しですのでそれ以上の年数、地盤の変化や自然災害などの環境によってはそれ以下の年数で劣化が目に見えてきます。
「うちのお墓はそんなに年数が経過していないし、見た目にも問題がなさそう…それに墓石を新調するのはもったいないから、今ある墓石を再利用したい」とお考えの方もいらっしゃる事でしょう。
しかし、現実的には少し難しいお話しです。お墓は地面の上にポンと墓石を置いて組み立てているだけではありません。
骨組みとして鉄筋が使用されているお墓もあれば、地盤を固めるためにコンクリートを流し込んであるお墓。墓石を水平に保ち、歪みやズレを発生させないためにコンクリートやモルタルを使用しているお墓もあります。
墓石の再利用をお考えの場合、注意しなければいけないのは研磨や加工を新たに行う場合は、特別な技術を持った業者さんしか対応が難しいということです。
研磨や加工を施す場合、墓石自体のサイズに大きく影響します。そのため新たな土地に墓石を再利用してお墓を建てようとした場合、それなりに高い技術力が求められるのです。
研磨、加工の段階で必然的にサイズが一回りほど小さく仕上がるので業者と相談するなど注意しならが進める必要があります。
ほか稀ではありますが、解体した墓石で新しいお墓を建てるのではなく、お地蔵さんや装飾、ベンチなどに加工して再利用をはかる方もいらっしゃいます。
思い入れのあるお墓を一部でも良いから取り入れたいという希望を持ち依頼される方もいますが、それに対応するには高い技術力を持った職人さんや業者さんの存在が不可欠です。
墓じまい後にお骨は永代供養する
墓じまいには、行政手続きが必要です。その後、お墓の閉眼供養を行った後にお墓の解体が始まります。
同時にお骨を永代供養してくれる霊園へ移送、納骨堂へ一定期間預けた後に供養するなどが行われます。
やむを得ず墓じまいを選択される方も居ます。
家族で代々守ってきたお墓を大切にしたい気持ちはあっても、お墓の状態の悪化、環境の変化、体力的な問題などさまざまな事情で苦渋の決断をされています。
最近は、自分が動けるうちに墓じまいを行い、お骨も納骨堂に預ける、もしくは永代供養をするという方法を取られる方も増えています。
一方で「ご先祖様や家族に悪い気がして…」と負い目を感じてしまい選択に踏み切れずに思い悩む方も多いものです。
上記のように思う方は「無縁墓」を防ぐための対策として検討されてみてはどうでしょう?
市や自治体が介入し、その所有者やそれに準ずる人物を探すことができずにいるお墓は無縁墓となってしまいます。
自分が行動できる時に決断する事は決して悪いことではありません。現在、無縁墓は沖縄だけでなく全国的に問題になっているからです。
改葬、墓じまいにかかる期間と費用
改葬、墓じまいの流れ
一般的な改葬
「現地調査、見積もり→閉眼供養→墓石の解体、処分→行政手続き→新墓への納骨→開眼供養」
※行政手続き:書類準備等に時間を要する場合があります。
墓じまいの流れ
「現地調査、見積もり→閉眼供養→墓石の解体、処分→行政手続き」
現在増加傾向にある改葬や墓じまいに対応する業者も多くいるので各社の見積もりを比較して決めるのも一つの方法です。
また遠方の場合は費用が掛かりますが遺骨の郵送を行っているところもあります。相談して決めても良いでしょう。
かかる費用と期間
墓じまいや改葬に必要な費用はいくつかあります。また期間も天候や時期によってばらつきがありますが、一般的な流れの場合以下のようになります。
墓石の解体、処分
15万~30万円です。お墓の面積や立地、金額が変動します。重機での解体、搬送が不可能な場合は高額になる事があります。
立地や天候、繁忙の状況に左右されるので約3日から10日は要します。解体する業者に現地調査や見積もりの段階で聞いておきましょう。
閉眼供養を行う費用(お布施等)
僧侶の方をお呼びします。読経して魂を抜いてもらいます。
気持ちとしてお布施をお渡ししますが、相場は1~5万円です。また、新たなお墓の開眼供養をする際にも同様の金額がかかります。
日程の調節は必要ですが、即日で終える事ができます。
行政手続き
届け出等は手数料がかかるだけなので市町村よって違いはありますが、約数百円程です。ご自身で手続きができない場合、代行する業者さんもいますが費用はまちまちです。
期間に関しては市町村によってかかる日数が異なります。即日や翌日に交付できるところもあれば数日かかるところもあるので事前に問い合わせましょう。
新しい場所への納骨
取り出したお骨を新しい場所に移す際にそこでかかる費用があります。新しいお墓の場合は開眼供養であったり、納骨堂の場合は使用料がかかります。
費用は納骨場所によって違うので事前に調べておきましょう。
以上がかかる費用と期間です。
墓じまいをするまでで約20万~、改葬の場合は新しいお墓の費用や納骨堂の使用料、永代供養の場合はその料金が加算されます。
期間も総合的にみて約1週間~多くても3週間程の日数がかかるでしょう。
お墓の引っ越し(改葬)を考えた理由について
お墓参りが大変
ご自身や家族の生活圏内にお墓がなく、車や他の交通機関を使ってお参りしなくてはならないケース、またお墓に通ずる道が悪路で身体的にお参りする事が困難な家族がいるケースがあります。
仕事の事情による転勤、進学や就職など人によって事情はさまざまですが、長年一つの場所にとどまり続ける事が難しいものです。
お墓参りは一般的に毎年行うので、そこで不便を感じてしまうとやがてお墓参りが億劫になってしまうのです。
そうならないためにも改葬は必要なことです。生活圏内で不便を感じることなく、お参りをする判断は英断と言えるでしょう。
霊園に管理をお願いしたい
沖縄では今現在でも、多くの家庭が個人墓地を所有しています。
昔からの風習で内地墓よりも大きなお墓の形状がスタンダード。ある程度の土地の確保が必要なのです。
しかし、核家族化が進んでいる現代において墓守がいないお墓が増加している傾向があります。所有者がいないお墓はやがて無縁墓となってしまいます。
個人墓地の場合は管理がすべて個人に委ねられているので、墓守の高齢化が進むとその管理が困難になってしまいます。そのため、管理型の霊園墓地への引っ越しを希望する方も近年増加しています。
管理型は、個人墓地と違って駐車場やトイレなどの設備やサービスが充実している霊園がほとんどです。中には掃除などの環境整備も霊園が請け負っているところや掃除道具の貸し出しを行っているところもあります。
さまざまな規定や規則はあるものの、個人墓地のデメリットをカバーしてくれる内容になっています。
家族や親族の事情
沖縄では家族単位でお墓を所有する場合と親族で所有し、その中から代表者をたてている場合があります。また、門中墓と言われる制度も色濃く残っており各地で風習が異なります。
家族単位のお墓の場合は、話合いをする事である程度の事柄を決定する事ができます。しかしこれが親族、門中になるとどうでしょう。
人数が増える分、意見が異なる場合もあるので根気が要ります。
墓守がその勤めを続ける事が難しくなった場合、管理型の霊園などで故人を供養するのも一つの方法です。
加齢による行動の制限や何かの事情で不便を感じてしまう事は残念ながら仕方のない事です。
檀家と寺の関係
寺院内に墓地を所有している方は沖縄では限られているかもしれませんが、本土の方ではごく一般的で○○宗派のお寺の檀家であるというご家庭は珍しくありません。
昔から檀家として寺院内の敷地に設けられた墓地に自身の家族を供養していて、法事の際にはそこの僧侶に依頼し、読経や法要をお願いします。
しかし檀家制度には葬儀や法要で分からない事や困った時には相談する事ができる反面、お寺によっては入壇料やお布施、寄付などの費用がその都度かかるので「付き合い」だけでは経済的に檀家の継続が難しくなる方もいらっしゃいます。
お墓というのは大切な方の永遠の眠りを次の世代、またその次の世代で守っていくものです。
守っていきたい気持ちと制度に負担やプレッシャーを感じてしまう状況を故人は望んではいないはずです。
ご自身だけで判断するのではなく、ご家族と相談のうえで最善の決断をするのが、本当の供養のかたちではないでしょうか?
檀家制度を負担に感じてしまい、離壇し霊園墓地や個人墓に改葬する方も居ますが、なるべく負担にならない方法を選択するようにしましょう。
改葬や墓じまいを行う際に起きやすい問題
家族や親戚の間で起きる問題
改葬や墓じまいは家族や親族にとって重要な決断です。個人の独断で決めてしまうと後に問題が生じてしまいます。
勝手に決断したことで家族や親族から批判を受けてしまい、その後の生活に影響を及ぼしてしまったケースもあります。「お墓はみんなで守っていくもの」という自覚が欠けてしまっていた事も一因になっているかと考えられます。
しっかりと話し合いをし、お墓の事や今後どうしていきたいかなどの希望や方針を理解してもらい、ご自身も人の意見を取り入れる余裕を持つ事が大切なのです。
霊園や寺院で起きる問題
多くの霊園は契約というかたちで書面を交わします。そこには契約するにあたって守って欲しい規則や規定が記されており、ルールを守っていれば大抵の問題は回避できます。
また、相談窓口を設けてある霊園もあるので、気になった時点で話を聞いてもらう事も可能です。
寺院等の檀家に入っている場合に改葬や墓じまいをする場合は、「離壇で起こる問題」に気をつけなくてはいけません。
現在檀家である場合、離壇する旨を寺院側にお伝えします。その際に「離壇料」が発生する寺院もあります。
知らずに請求されてしまうと気が悪いかと思います。
対策としては、事前にどのような理由で離壇したいと相談し、その際にどんな手続きが必要かなどを寺院側とお話ししましょう。
今までお世話になっていた寺院さんです。最後まで問題なく、穏やかに且つすみやかに離壇できるよう努めましょう。
依頼する石材店で起きる問題
信頼できる石材店があり「解体、運搬、処分、改葬」で新しいお墓の事も依頼できるのであればそれに越したことはありません。
各地で業者をバラバラにしてしまうと余計に時間がかかってしまったり、不便なことが出てき兼ねませんので、できれば一貫して一つの石材店にお任せする事をおすすめします。
作業の日程やどのくらいの期間でできるかなども事前に確認し把握しておくと安心です。丸投げではなく、依頼主として状況の把握も大切です。
しかし、寺院や霊園によっては、指定の石材店が決まっているところもあります。改葬や墓じまいの際には指定があるかどうかも聞いておきましょう。
まとめ
今回は「お墓の引っ越し(改葬)」についてお書きしました。近年改葬や墓じまいが増えています。
その背景には核家族化の増加や高齢化社会等が一因にあります。お墓を守っていくことは大切な事ですが、今を生きる人たちの生活を守るために決断も必要です。
今と昔は違います。現代の状況の中で生活していくために柔軟な考えが求められています。親族や家族としっかり話したうえで決断し、後悔や心残りの無いよう前を向いて行動するようにしましょう。