2023/07/29
筋力を強化するレジスタンス運動はアルツハイマー病の予防や発症を
遅らせる可能性があることが、新研究から判明。
レジスタンス運動をした人は、しなかった人より
アルツハイマー病リスクの原因となるホルモン値が低かった。専門家が研究結果について説明。
運動には心臓や筋肉、骨の健康にとって多くのメリットがあるが、新たな研究から、
ある特定の運動にアルツハイマー病の予防や発症を遅らせる可能性があることがわかった。
脳についての学術誌『Frontiers in Neuroscience』に、
レジスタンス運動を日常的に行うとアルツハイマー病リスクを高めるホルモンに影響が
出るかどうかを調べた研究が掲載された。
レジスタンス運動やそれと同様の運動が、アルツハイマー病を予防、あるいは少なくとも発症を遅らせられ、
患者にとって簡単で手頃な治療になるかどうかを見るのが目的だった。
研究は、脳に有害なタンパク質の一種、アミロイドβを増やす原因となる遺伝子変異を持つマウスで実験を行った。
アミロイドβは脳細胞にダメージを与え、アルツハイマー病の重要なマーカーになるのだ。
マウスに体重の75%、90%、100%の荷重を尻尾につけて、急勾配のハシゴを登る運動をさせた。
人間がジムで行う典型的なレジスタンス運動を模した実験だ。
4週間にわたる運動の後、血液サンプルを採取して人間のコルチゾールと等質のマウスのホルモン、
コルチコステロンの値を測定した。ストレスに反応してこの値が高まると、アルツハイマー病のリスクが高まるのだ。
その結果、運動するよう訓練されたマウスのホルモンレベルは平常だった。
つまり、対照群の遺伝子変異のないマウスとホルモンレベルは同じだったということ。
マウスの脳組織の分析でも、アミロイドβは減っていた。
「これは、運動がアルツハイマー病の症状を引き起こす神経病理学上の変化を逆転させる可能性が
あることを確認するものだ」と、論文の筆頭著者エンリケ・コレイア・カンポスはプレスリリースで述べている。
研究者たちはまた、マウスの行動を観察して不安度を判定し、レジスタンス運動が不安や動揺の
度合いを下げることも発見した.
共同筆頭著者でサンパウロ大学化学学会脳科学研究所研究員のデイディアン・エリサ・リベイロは
プレスリリースで述べている。
動揺や不安、放浪はアルツハイマー病の初期症状としてよくあるものだ。
論文の最終著者でサンパウロ連邦大学のビアトリス・モンテイロ・ロンゴ神経生理学教授は、
レジスタンス運動がアルツハイマー病の予防や発症を遅らせる効果があることがますます証明されつつあるとして、
「レジスタンス運動には抗炎症作用があることが、こうした可能性がある主な理由だと考えられる」と述べている。
レジスタンス運動とは何か? 脳の健康にどんな影響を与える?
レジスタンス運動とは筋力トレーニングで、筋肉量を増やすことだと、脳科学研究者で神経変性疾患専門家の
デール・ブレディセン医学博士は言う。
「アルツハイマー病リスクを低減する上で重要なインスリン感受性を高めます。
また、加齢によって起こることが多いサルコペニア(筋肉の量が減少していくこと)も予防します」
さらに睡眠の改善や、筋肉に関連した脳へのシグナル強化、炎症の緩和、心臓の健康も向上させるという。
レジスタンス運動はなぜアルツハイマー病リスクを低減したり発症を遅らせられる?
今回の研究は人間ではなくマウスで実験したものだが、人間で言われてきたことに適合するとブレディセン博士は言う。「上記のようなメカニズムから、認知機能低下のリスクを低減します」
アルツハイマー病は主に2つの原因によって起こる。
エネルギーの低下(血流や酸素化)と炎症の増加だ。
「筋力トレーニングはそのどちらに対処するのにも役立ちます」
結 論
この研究は直接、人間で行ったものではないが、筋力トレーニングは認知機能低下のリスクを低減できるという考え方を強化するものだ。
アルツハイマー病はまったく予防不可能な病気ではないという、さらなるエビデンスだとブレディセン博士は言う。
とはいえ、筋力トレーニングを始める前に、あなたには適切かどうか、まずは医師に相談することを忘れずに。
※この記事は、海外のサイトで掲載されたものの翻訳版です。
データや研究結果はすべてオリジナル記事によるものです。
Translation: Mitsuko Kanno From Prevention
https://www.harpersbazaar.com/jp/beauty/diet-fitness/a44570116/resistance-training-prevent-or-delay-alzheimer-s-disease-study-230729-lift1/
より転用させて頂きました。