厚生労働省の発表で日本の高齢者(65歳以上)の人口は、2021年に3600万人となり、
人口全体における割合は29.1%、また2021年男性の平均寿命は81.47歳、
女性の平均寿命が87.57歳になりました。
このように、高齢化社会を迎えている日本ですが、高齢者の住宅問題について最近は,
「自立できる高齢者向けの分譲シニアマンション」が多く販売され、注目を集めるようになりました。
利点や魅力も多い「シニア向けマンション」だが…
高齢向け分譲シニアマンションは、分譲マンションですから、区分所有することになるので売却や賃貸することが可能。
一般的なマンションと違うところは、シニア層の年齢にならないと入居できないことや、マンション購入費用とは別に、
施設利用の権利金などが別途必要になる場合があることなどです。
また、購入時に健康診断書や身元引受人が必要であることなどや、共同浴場、レストラン等共用施設が
充実している分、管理費等もそれなりに高額なことなどが一般の分譲マンションと違っている部分になります。
高齢者向け分譲シニアマンションは、発売当初、デベロッパーがシニア居住者に住みやすいように
居宅介護支援事業所を併設したり、平日の昼間にマンション内に医師や
看護師が常駐したりするなど、至れり尽くせりのサービスを謳っているところもあります。
先日私のところに届いたご相談で、その点に魅力を感じて
分譲シニアマンションを購入した方がいらっしゃいました。
しかし、購入に伴いマンションが事業主から管理組合に引き渡しされて管理運営が管理組合に移った途端、
医師や看護師が平日毎日常駐するのは経費がかかり過ぎるので、
支出削減のために医師の常駐を取りやめ、「看護師が週2回昼間に勤務」することに変更するという議案が
総会に上程されてしまったという内容でした。
魅力的な施設」は管理組合と管理費によって運営
総会では「医師が平日常駐だからこのマンションを購入したのに」いう意見も多数あり、
総会は荒れましたが、議決行使書と委任状であっさりと医師の常駐を取りやめ、
看護師が週2回昼間に常駐することが承認可決されてしまいました。
また他にケースでは、給食の配膳業者が利用者の少ないことを理由に突然撤退して、
近所のお弁当屋さんの配達に切り替えられ、
「レストランラウンジで出前の弁当を食べるなんて話が違う」とトラブルになったマンションもあるようです。
分譲シニアマンションも分譲マンションなので、基本的に一般のマンションと同じように、
区分所有者が構成員となる管理組合が運営しなければなりません。
一見、楽園のような、温泉付き大浴場、豪華なラウンジレストラン、ゲストルームなどの様々な楽しい施設が購入時には宣伝されるわけですが、これらの費用を出し維持するのは区分所有者自らが運営する管理組合なのです。
そのために、管理費の見直しで新築時の魅力的なサービスを廃止するという結論に至る可能性も大きいのです。
とはいえ、高齢者向け分譲シニアマンションは有料老人ホームと比べてみると、区分所有権があることや、居室(専有部分)にトイレ、風呂場、キッチンが自分専用で自由に使用できることなどが魅力と言えるでしょう。
有料老人ホームでは一般的に、その日の行動予定が組み込まれていたり、家族との面会時間を自由に設定することができなかったりすることも多く、外泊や外出も制限される場合もあり、その点マンションは自由だからです。
「企業戦士」と呼ばれた「団塊の世代」の人たちは、定年後の自分の生き方に自由と安らぎを求めて、
生活を再設計するのに最適な終の棲家として高齢者向けシニアマンションを選択する方が増えていると思われるのが主な原因と考えられます。
選任された管理組合でとんでもない目にあうことに…
ここからより具体的な例として、定年まで大手の商社に勤めあげてから、今は首都圏の分譲のシニアマンションにお住いの広井義幸(仮名)さん80歳からのご相談をもとにご紹介しましょう。
広井さんは今まで住んでいた一般の居住用マンションに夫婦二人で住んでいましたが長年連れ添った奥様を亡くされ、一人息子は海外勤務で家族と暮らしているため、息子達に心配をかけたくないという気持ちから今まで住んでいたマンションを5,000万円で売却。
6年前の、74歳の時にシニア向け分譲マンションを新築で購入しました。
マンションの購入金額は2,800万円でその他、施設を利用する権利金等初期費用300万円を支払い、
区分所有者としてお一人でお住まいになっております。
その他に費用面でかかるものといえば、もちろん分譲マンションなので毎月、管理費・修繕積立金等も3万円くらいかかります。
ここで注意として一般の分譲マンションは管理費は持ち分割合で算出されますが、シニア向けマンションの場合には、同居者がいる場合にかかるコストを意識して割増しになる場合もあるようです。
また、配膳等の提供を希望した場合には別途1ヵ月10万円以上の費用が掛かるそうです。
さて入居が決まると、区分所有者は管理組合に入ることになります。
広井さんは、定年まで大手の商社にお勤めだったため年金も比較的多く、富裕層の部類に入る高齢者です。
現役時代の経験も豊富だったため、そういった背景も含め期待され、管理組合では、総会で監事に選任されました。
ここから順風満帆かに見えた広井さんのシニア向けマンションでの生活ですが、現実は予想だにしない厳しいものでした。
なんと、理事長や副理事長などの管理組合の同僚から、ひどい暴言を浴びせつけられたり、意地悪をされたりなどの人間関係のトラブルに見舞われることになってしまったのです。