高齢の親のために知っておきたい「延命治療」を選択する割合と「かかる費用」とは?

高齢の親のために知っておきたい「延命治療」を選択する割合と「かかる費用」とは?

超高齢社会に入り高齢者の人口が増えるなか、延命治療によって命をつなぐ人もいます。
 
しかし、延命治療をするかどうかの決断をするのは家族などの周囲の人で、治療をするかどうかの判断で迷う人もいます。

死が差し迫った高齢の人に延命治療をした場合、どのぐらいの費用がかかるのでしょうか。

この記事では、終末期の延命治療について詳しく解説します。

また、延命治療を希望する高齢者はどのぐらいいるのでしょうか。

ポイント①延命治療を希望しない高齢者が9割以上

死が差し迫った人に対する延命治療とは、心肺蘇生や気管挿管、人工呼吸器の装着が挙げられます。

このような治療を施すことで心臓を動かすことはできるようになりますが、高齢者が自ら食事をとったり動いたりすることはなくなり、生きるために苦しい治療を続ける選択をすることにジレンマを感じる人もいます。

 
実際に家族の延命治療を行った人の中には、治療を行ったことを後悔し、自分のときには延命治療をしないでほしいと考える人もいるようです。


 内閣府が2012年に行った「高齢者の健康に関する意識調査」で、65歳以上の高齢者に延命治療の希望を尋ねたところ、「延命のみを目的とした医療は行

わず、自然に任せてほしい」と答えた人は回答者の⇒91.1%にのぼりました。
 
延命のみを目的とした医療を希望しない人の割合は2002年の調査と比べると10ポイント、2007年の調査と比べても3.4ポイント上昇しています。

一方、「少しでも延命できるよう、あらゆる医療を受けたい」と答えた人は4.7%にとどまり、2002年の調査と比べると4.5ポイント減少しています。

ポイント②高額療養費制度を利用すれば負担は抑えられる

それでは、延命治療をするとなるとどのぐらいの費用負担が生じるのでしょうか。

日本医師会が2007年に公表した「後期高齢者の死亡前入院医療費の調査・分析」によると、後期高齢者の終末期の入院単価は1日あたり3万1800円で、死亡前30日以内の入院費総額の⇒平均は63万3100円となりました。

もちろんこの金額を本人や家族が支払っているのではなく、1割から3割を支払うことになります。

また、高額療養費制度を利用すれば、一般的な後期高齢者だと1カ月あたりの自己負担額は5万7600円に抑えることができます。
 
治療にかかる費用の一部は年金でカバーできるため、家族の経済的な負担が極端に重くなるということはないでしょう。

ポイント③事前に話し合いをしている人は少ない

延命治療をするかどうかの判断をスムーズに行うためには、本人が生きているうちにきちんと意志を確認し、いざという時のために事前指示書を作成しておくことが大切です。

特に、治る見込みがないときに延命治療を拒否することを記した事前指示書を作成することに賛成する国民は7割程度にのぼります。


 しかし、一般国民の9割以上が事前指示書を作成していませんし、終末期医療について家族と話し合ったことがある一般国民は半数以下で、医師や看護師といった医療従事者でも話し合ったことがない割合は3割~4割います。
 
事前指示書がない場合、家族の誰かが治療の継続か中断の判断をしなければならなくなり、どちらの選択をしたとしても、家族の精神的な負担は大きくなります。
 
元気なときに終末期の相談をすることを縁起でもないと嫌う人もいますが、いざというときに家族の負担を減らすためにも、元気なうちに事前指示書を作成しておくのがおすすめです。

ポイント④お金の不安以上に心の負担が大きい

元気なときに延命治療の希望を尋ねると、9割の高齢者が希望しないと回答しています。

しかし、いざ死が差し迫ったときに延命治療をするかどうかの判断をするのは、家族などの周りの人です。
 
経済的な不安もありますが、それ以上に生命に関することを決断しなければならない負担のほうが大きくなります。

家族の負担を軽減するためにも、元気なうちに事前指示書を作成し、いざという時のことを家族と共有しておくことが大切です。

出典  執筆者:FINANCIAL FIELD編集部

日本医師会 後期高齢者の死亡前入院医療費の調査・分析
神戸新聞 NEXT延命治療95%「望まない」高年齢ほど割合多く
内閣府 第1章第2節3(4)延命治療は行わず「自然にまかせてほしい」が91.1%
内閣府 平成29年高齢者の健康に関する調査結果(全体版)
厚生労働省 人生の最終段階における医療に関する意識調査

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